【間接照明】「メリット・種類・取り入れ方」失敗しないポイント

間接照明は、快適な住まいづくりをするための大切な要素の一つです。住宅の新築やリフォームの際、理想の間取りや機能の実現を目指すと同時に、間接照明にも配慮することで、暮らしにゆとりをもたらすことができます。

特に、間接照明の設置に工事が必要となる建築化照明の場合、建築前の十分な検討が大切です。空間に調和した間接照明を実現できれば、そこで過ごす時間はきっと穏やかなものとなり、リラックスできる家に仕上がるでしょう。

間接照明の魅力

間接照明は、光源が発する光を壁や天井などに反射させ、室内に均一で柔らかな明かりの広がりを生み出す照明です。間接照明が設置された空間で、通常、その光源が目に見えることはなく、光が直接目に届くことはありません。

こうしたことから、柔らかく優しい雰囲気の明かりを部屋に取り入れられることが、間接照明の大きな特徴です。生活に必須である直接的な照明とは別に、間接照明が備えられた部屋は、それだけで安らぎのある空間に仕上げることができるでしょう。

間接照明は、設置する場所や種類によって、様々な効果を得ることができます。間接照明を上手く取り入れることで、心が和らぐ美しい光の濃淡に、空間や身体が包み込まれるような感覚が体験できます。また、壁や天井に反射した柔らかい光の広がりにより、くつろいだ雰囲気を演出することが可能です。

さらに、照明器具や光源の存在を感じさせない間接的な明かりが部屋の隅や壁際を照らすことで、空間が広く感じられ、のびのびとした時間を過ごすことにもつながるでしょう。

そうした空間の広がりが、部屋に開放感をもたらしてくれるともいえます。心地良く包み込まれるような感覚と、適度な開放感を同時に得られることも、間接照明の魅力です。

間接照明の種類

間接照明には、求める雰囲気や部屋の形状に応じて、選択できる種類があります。ここでは視覚的、感覚的に優れた効果を発揮する4つの間接照明を取り上げます。それぞれの特徴を理解することで、よりくつろげる、ゆとりのある空間づくりに間接照明を役立てられるでしょう。

コーニス照明

コーニス照明は、壁を照らしだす間接照明を指します。壁に光を反射させることで、空間に奥行を与え、部屋を広く感じさせる効果があります。一般的に、壁に対して平行な位置に、下向きに光源を設置することが多いため、天井が高い部屋では光源が通常の視点から見えてしまうことも考えられます。

したがって、コーニス照明は比較的天井高の低い空間で、その効果を発揮する間接照明です。ただ、照明器具の設置位置や遮光部の形状を工夫することで、光源を見えにくくすることが可能であるため、必ずしも天井が低い空間のみに用いなくてはならないというわけではありません。

コーニス照明で照らす壁が、木材やタイルなどで仕上げられたアクセントウォールである場合も、間接照明による高い演出効果が期待できます。タイルなどを用いた凹凸のある壁は、コーニス照明によって豊かな陰影を生みだすことが可能です。

木材を使用した壁も、照明の色合いと相まって、温もりのある穏やかな雰囲気を空間にもたらしてくれるでしょう。このように壁の材質や形状がコーニス照明と溶け合うことで、心地良い趣が空間を包み込んでくれるといえます。

同様に、カーテンを壁面と捉え、コーニス照明で照らしだすことも、カーテンのドレープを美しく見せる効果的な手法です。コーニス照明は、壁面に豊かな光の濃淡や陰影を映しだす特徴があるため、光の広がりを遮るようなものが壁にない方が効果的な照明効果が得られます。

例えば、コンセントなどのわずかな出っ張りであっても、照明時に壁に不要な影をつくりだしかねません。したがって、コーニス照明の光を照射させる壁には、コンセントなどを含めた要素をできる範囲内で極力取り除くことが求められます。

コーブ照明

コーブ照明は、天井を照らしだす間接照明を指します。天井に漏れ出るようなふんわりとした均一な明かりをつくりだすことで、天井が高く感じられる開放的な空間に仕上げることができます。

また、柔らかな光が天井に広がることで、視覚的なリラックス効果が期待でき、穏やかな時間を過ごすことに役立つでしょう。コーブ照明によって天井を照らす際、天井と光源の距離を長くとるほど、空間に広がりを与える照明効果が得られ、天井の広い範囲を均一に照らしだすことができます。

このような照明効果をコーブ照明に求める場合は、ある程度余裕がある天井高が必要です。反対に、天井と光源の距離を短くすると、天井に帯状の明かりを作り出すことができ、幻想的な空間を演出することができます。

こうした照明効果は、廊下など、天井高が比較的低い、限られた空間でも有効です。コーブ照明は、部屋の壁際に設置するだけではなく、空間中央の天井の一部を下げ、その下がり天井の輪郭に沿って設置する方法もあります。

任意の場所に、自由に魅力的な照明演出が可能なのもコーブ照明の魅力と言えます。コーブ照明は、主に天井に光を反射させる間接照明であるため、床への照度は決して高くありません。

したがって、リビングなど、直接的な明るさが必要になる空間にコーブ照明を取り入れる際は、同時に高い照度が確保できるよう、シーリングライトやダウンライトなどを併用すると、照度の低さを補うことができます。

コファー照明

コファー照明は天井を照らしだす間接照明ですが、同様に天井に光を反射させるコーブ照明とは異なる形状を有しています。コファーというのは堀り上げ天井を意味する言葉であり、天井部がくり抜けたような凹型の空洞空間を指します。

そしてそのくり抜かれた空間の内表面を照らす照明がコファー照明です。明かりがついてるときはもちろんですが、消灯時でも天井の造形美を味わうことができるのもコファー照明の魅力の一つです。

コファー照明は洗練された上質な空間の演出にも有効です。一方で、柔らかな明かりが天井を満たすことで、空間全体がふんわりと包み込まれるような印象になるため、優しい雰囲気をつくりだす照明としても効果的でしょう。

このように、コファー照明は柔らかな明かりが広い範囲に届く照明であるため、視覚的に優れた間接照明だといえます。また、くり抜いた天井の開口部の形状によって、明かりの趣が変化することもコファー照明の特徴です。

掘り上げた空間の天井高が高ければ、天井面の明るさを広く均一に仕上げることができます。天井を掘り上げるという特性上、コファー照明を取り入れる空間の天井高は、ある程度余裕がある方が効果的な照明効果につながります。

加えて、コファー照明もコーブ照明と同様に、照度が高い照明ではないため、必要に応じて直接的な明かりを生む照明と併用することがポイントです。

バランス照明

バランス照明は、壁と天井の双方に、あるいは壁の上下に光を照射する間接照明です。設置する位置は、窓の高さに合わせた壁の比較的高い位置や、その部屋で過ごす人の座ったときの視線に合わせた位置などを目安にすることが一般的です。

バランス照明は、取り入れることで、壁にアクセントを加えることができる照明だといえます。また、バランス照明は壁面に光源の目隠し板などが設置されることが多いため、明かりがついていないときにも壁面のアクセントとなる特徴があります。

加えて、コーニス照明とコーブ照明の効果を両方取り入れたいときにも、上下に光を放つバランス照明を検討することは有効でしょう。リビングに配置するソファー付近や、ベッドの頭側の壁などにバランス照明を設置するのも効果的です。

○コーニス照明:壁を照らし、空間に奥行を与える。
○コーブ照明:天井を照らし、空間に開放感を与える。
○コファー照明:掘り上げ天井の内表面を照らし、天井や空間に優しく上質な雰囲気をもたらす。
○バランス照明:壁と天井、または壁の上下を照らし、空間にアクセントを与える。上下に光が広がることから、コーニス照明とコーブ照明の特徴を併せ持つ。

間接照明の上手な取り入れ方

間接照明の良さを十分に得られるよう、取り入れる際に意識すると役立つ点がいくつかあります。

異なる種類の照明を併用する

間接照明は、発せられる光のおよそ90%以上が、壁や天井に当たるように計算され設置されます。したがって、床や人のいる空間を直接照らすシーリングライトやダウンライトといった照明器具と比較すると、間接照明の明るさは弱いことが一般的です。

間接照明の照度はある程度自由に設定することが可能ですが、たとえシーリングライトやダウンライトなどの、直接的な光をもたらす照明器具と同等の照度にしたとしても、読書や書き物、家事、細かな作業などには不向きなこともあるでしょう。

間接照明は、明かりの広がりを演出したり、陰影をつくりだしたりすることで空間の雰囲気をより良いものにする効果があります。つまり、床や手もとを照らす直接的な光を必要とする様々な作業には、それに相応しい明かりを用意しつつ、必要に応じて間接照明と併用することが大切です。

間接照明以外の照明器具には、床や狙った空間を照らすことができる直接型と呼ばれる種類や、光源の周囲をまんべんなく照らす全般拡散型と呼ばれる種類があります。

部屋とのバランスを意識する

間接照明がつくりだす雰囲気の大切な要素である光の色合いや明るさなどは、間接照明を設置する部屋の広さや色合い、部材の材質などの影響を大きく受けます。そのため、間接照明を取り入れる際は、設置する部屋とのバランスを慎重に見極めることも、欠かすことのできないポイントです。

照明には主に、電球色、温白色、昼白色、昼光色といった色合いがあり、求める雰囲気や部屋とのバランスを考慮して選択することができます。最もオレンジ色に近い暖色系の照明が電球色であり、やや青みがかった最も白い寒色系の照明が昼光色です。

そして、その間に位置する暖色系の中間色が温白色であり、寒色系の中間色が昼白色です。こうしたなかから好みの色合いが選べる一方で、照明の色の選択を誤ると、間接照明が空間と調和しないといった事態を招いてしまうこともあります。

また、天井高や部屋の広さに対して、間接照明の照度が強すぎたり弱すぎたりすると、思ったような効果が得られないこともあるでしょう。こうしたことから、間接照明の色合いや照度は、部屋との相性を注意深く考えて決める必要があります。

適切な照度や色合いがわからない場合や迷う場合、また、その時々に合わせて間接照明の雰囲気を変えたいと考える場合などには、調光機能や調色機能を間接照明に備えることもできます。

調光機能は明るさの調節、調色機能は色合いの調節が可能です。間接照明の照度や色合いに幅を持たせることで、より多様な場面に対応することができるため、間接照明に調光機能や調色機能を付随させることも効果的な選択肢の一つでしょう。

加えて、間接照明を反射させる部材が壁紙なのか、木材なのか、あるいはそれ以外の材質なのかによっても、間接照明の明るさや色合いには変化が生じます。同じ木材であっても、塗装などといった表面の仕上げによって、間接照明の見え方に違いがでることも少なくありません。

○直接型や全般拡散型の照明を必要に応じて併用する。
○間接照明の色合いや照度と、部屋の部材の材質や色合い、空間の雰囲気とのバランスをとる。
○調光機能、調色機能も活用可能。

間接照明を取り入れる際の注意点

せっかくの間接照明が台無しにならないよう、検討段階から注意するべきポイントがあります。完成した間接照明を見てがっかりするのは避けたいものです。以下のポイントを押さえて、残念な間接照明にならないよう注意しましょう。

光源を隠す

間接照明の魅力である漏れ出るような柔らかな明かりは、上手に設置された照明器具があってこそ実現できるものだといえます。つまり、その空間で過ごす人の目に、光源が映らないよう配慮して照明器具を設置する必要があるのです。

こうした配慮が不足すると、間接照明が十分に機能しないといった事態が生じることもあるため、注意が必要です。例えば、間接照明を反射させる壁や天井がつくりだす遮光角が浅すぎる場合、日々の生活のなかで、光源が見えてしまうこともあり得ます。

光源が直接見えてしまっては、見栄えが悪いだけではなく、間接的な光でさえなくなってしまうため、間接照明として不十分と言わざるを得ません。

また、窓の近くに間接照明を取り入れることも多く考えられますが、その場合も、夜間などに間接照明の光源が窓に映り込まないかどうか検討する必要があります。室内に鏡がある場合も、窓と同様の理由から注意が必要です。

加えて、照明器具がその空間で過ごす人から見えないようにするために、光を反射させる壁や天井の材質選びも大切な要素です。壁や天井に光沢がある部材を使用しているの場合は、予想に反して光源が映り込んでしまうこともあるため、そうした壁や天井と照明器具との距離などを検討する必要があるでしょう。

明かりのムラをなくす

間接照明の幅が広い場合、一つの照明器具では足りないこともあります。そうした際、複数の照明器具が設置時に離れてしまったり、発光部が連続していなかったりすると、明るさにムラが生じることも考えられます。

そういった場合には、発光部が途切れないシームレスタイプの照明器具を選択ことで明るさのムラが解消できるため、必要に応じてそうした光源を選択することも効果的です。

複雑な造りにしない

間接照明の設置では、光源が見えないように十分に検討することが重要ですが、一方で、光源が必要以上に奥まってしまうことも避けなくてはなりません。照明器具が必要以上に隠されてしまうと、壁や天井のごく狭い、限られた範囲にしか光が及ばないという事態の原因になり得ます。

また、掃除のしやすさやメンテナンス性も考え、建物と複雑に一体化したようなつくりの間接照明にならないよう配慮することも大切です。

○光源が通常の視点から見えないようにする。
○明かりムラをなくす。
○お手入れのしやすさを考慮し、複雑な造りの建築化照明にならないよう配慮する。

間接照明がある暮らし

夕食後の団らんのときや、就寝前の穏やかなひととき、そんな日々の暮らしのなかの大切な時間を、間接照明は柔らかく、そして優しく照らしだしてくれるでしょう。空間に広がりを与えたり、お洒落な雰囲気づくりに役立ったりと、間接照明は暮らしに彩りを与えてくれるといえます。

生活に必須の直接的な光だけではなく、体や心を包み込み、流れの速い日常から束の間切り離してくれるような感覚が得られる間接照明は、きっと住む人の心にゆとりを与えてくれるでしょう。

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まとめ:暮らしにゆとりをもたらす「間接照明」

間接照明は、壁や天井に光を反射させることで、明かりを柔らかくすることができる照明です。求める明かりの雰囲気や部屋とのバランスを考え、間接照明はいくつかの種類から選択することができます。

色合いや照度など、暮らしに合わせた間接照明を取り入れることで、リラックスできる空間の実現に役立ちます。間接照明によって、お洒落で穏やかな明かりが空間を照らしだすことで、視覚的にも感覚的にもゆとりある時間を過ごせるでしょう。