シーリングファンという言葉を聞いたことがない人でも、少しお洒落な喫茶店やお店、モデルハウスなどで、天井で回っているプロペラのようなものを目にしたことがあるのではないでしょうか。
そのプロペラこそが、シーリングファンです。シーリングファンには、見た目がお洒落だというインテリア性だけではなく、住まいの環境をより良くしてくれるといった優れた点があります。
住環境を改善し、さらにお洒落な空間の演出もしてくれる優れもの、シーリングファンは、きっと暮らしに心地良いゆとりをもたらしてくれるでしょう。
目次
シーリングファンとは
シーリングファンは、住宅をはじめとする、様々な空間の天井に取りつけるプロペラ状の設備を指します。シーリングファンは英語で「ceiling fan」と表記し、「ceiling」が「天井(の)」、「fan」が「送風機」といった意味を持ちます。
名称からもわかるとおり、シーリングファンは天井に備えつけられたサーキュレーターだと言えるでしょう。扇風機が、風を直接体に当てて涼を得るものであるのに対して、サーキュレーターは空間の空気を循環させることが目的です。
サーキュレーターというと、置き型のものをイメージする人も多いかもしれません。置き型のサーキュレーターには、直進的な気流によって空気を動かすという特徴があります。一方で、シーリングファンは、一般的な置き型のサーキュレーターよりも大きな羽で、空間全体の空気を大きく攪拌することが特徴です。
また、生じる風にも違いがあり、置き型のサーキュレーターの風は直線的であるのに対して、シーリングファンが生み出す風は比較的柔らかい印象を与えるでしょう。
このように、シーリングファンは天井でプロペラを回転させることで、室内の空気を大きく攪拌し、柔らかく循環させる働きがあります。シーリングファンによって空気を循環させることで、空間を快適に保つ効果が期待できると言えます。
加えて、シーリングファンは、戸建てだけではなく、マンションなど、あらゆる場所に設置することができ、その効果を発揮します。
○空間全体の空気を攪拌し、柔らかく循環させる。
シーリングファンの効果
住まいにシーリングファンを取り入れることで得られる好効果は、季節によっても異なります。一年を通じて様々なメリットをもたらすシーリングファンの効果を、7つに分けて紹介します。
1.温度ムラを減らす
シーリングファンの大きなメリットは、室内の空気を攪拌し、循環させることによって、空間の温度ムラを減らしてくれることです。つまり、シーリングファンによって空気をかき混ぜることで、空間全体の温度が一定に保たれることが期待できます。
したがって、シーリングファンが稼働していれば、室内のどこにいても体感温度があまり変わらず、快適に過ごせると言えるでしょう。
2.空気の流れを生む
シーリングファンを設置することで、空間の空気が循環し、一定の気流を作ることができます。空気が室内の同じ所に留まらず、絶えず循環していることは、その空間の快適さにも影響を与えます。
窓が少なく思うように換気ができなかったり、空気の流れがあまり良くない間取りであったりする場合も、シーリングファンによって空気の淀みを解消することにつながるでしょう。
窓付近の新鮮な空気を、シーリングファンによって空間全体に循環させることで、それまでは新鮮な空気が届きにくかった部分にまで、風を送り届けることができるようになります。
加えて、少々暑く感じられても冷房を使用するには早いといった、春や初夏などにも、シーリングファンは心地良い穏やかな風を生むため、冷房を使用せずに快適に過ごしたいときにも役立ちます。
窓を開けると寒かったり、窓が開けにくい環境であったりする場合にも、シーリングファンがあれば冷房を使用しなくても快適さが得られることがあります。
3.換気の効率が高まる
2003年に施行された法律により、それ以降新たに建築する住宅などのすべての建物には、原則として24時間換気システムを備える義務があります。この24時間換気システムは、1時間に建物内の半分以上の空気が換気できなくてはなりません。
24時間換気システムは、シックハウスの原因となる化学物質による住宅内の空気汚染を防ぐことが主な目的で、住まいの空気環境を健全に保つことに役立ちます。
シーリングファンが取りつけられた住まいであれば、建物内の空気を攪拌し、効率良く循環させることができるため、24時間換気システムと併用することで、より換気効率を高めることが期待できます。
したがって、換気を促進し、住まいの空気を新鮮に保つためにも、シーリングファンは効果的だと言えるでしょう。
4.冷暖房の効率が高まる
暖房効率
一般的に、暖められた空気は空間の上方にたまりやすく、反対に冷やされた空気は下方にたまりやすいという性質があります。冬場に暖房を使用する際、足元がなかなか暖まらないという経験がある人も多いのではないでしょうか。
この足元の寒さは、せっかく暖めた空気が天井付近に上がってしまうことで、床付近の冷えがなかなか解消されないことが原因の一つです。こうしたときに、シーリングファンがあれば、天井付近にたまってしまった暖かい空気を、人が生活する床付近にまで押し下げることができます。
シーリングファンによって部屋の空気をかき混ぜることで、天井付近と床付近の温度差を減らし、空間の温度ムラの解消に役立ちます。したがって、シーリングファンは、いつまでたっても暖まらない足元の冷えの解消にも役立つのです。
エアコンをはじめとする暖房器具によって暖められた空気を、部屋中に循環させる働きがシーリングファンにはあるため、暖房効率が高まることもシーリングファンを取り入れる大きなメリットです。
また、24時間換気システムの導入により、冬場、暖かい空気が屋外へ排気されることで、部屋が寒く感じられることもあります。住宅によって異なりますが、一般的に24時間換気システムの排気口は、壁の高い位置や天井に設けられることが多いでしょう。
つまり、空間の上方にたまりやすい暖められた空気は、24時間換気システムによって排気されやすい状況にあるとも言えるのです。こうしたときにも、シーリングファンが暖かい空気を循環させ、押し下げていれば、室内の温度低下を少なく抑えられるでしょう。
また、冬場など、窓を開ける機会が減る際、暖かさを保ちつつ、淀みがちな室内の空気を循環させられることも、シーリングファンのメリットです。
加えて、シーリングファンを稼働させることで暖房効率が高まると、電気代の節約にもつながります。暖房器具をしようしても、思うような快適さが得られず、設定温度を変更したり、暖房を強めたりすることもあるのではないでしょうか。
しかし、そうまでしてもなかなか理想の快適さが実現できないことも少なくありません。そうなると、さらに暖房を強めたり、暖房器具を追加したりして、結果的に電気代が多くかかってしまうこともあるでしょう。
そうした際も、シーリングファンを使用し暖房効率を高めることで、部屋の快適な状態を維持しやすくなるため、電気代をある程度抑えられる効果が期待できます。
暮らしやすさや快適さ、日々のゆとりに大きな影響を与える空調だからこそ、シーリングファンを併用した高効率の実現が大切なのではないでしょうか。
冷房効率
シーリングファンが空調設備にもたらす好効果は暖房だけにとどまらず、冷房に対しても有効です。シーリングファンによって部屋全体に安定した空気の流れが作られるため、効率良く空間を冷やすことができます。
心地良い空気の流れが、そこで過ごす人に触れることで体感的にも涼しくなり、結果として体感温度の低下にもつながります。したがって、必要以上に設定温度を低くしたり、何度も設定温度を変更したりするという事態も避けられるでしょう。
加えて、エアコンの風が当たっている場所だけが涼しく、少し離れた所は暑いといった空間内の涼しさのムラも、シーリングファンによって手軽に解消することが可能です。
また、冷房効率が高まれば、暖房同様、もちろん電気代を抑えることにもつながります。エアコンを頻繁に使う家庭なら、シーリングファンの節電効果をより実感できるでしょう。
さらに、広めのリビングなどの温度管理に不満や難しさを感じている人も、シーリングファンを取り入れることで、体感的な快適さを特に実感できると言えます。
5.洗濯物の室内干し
スペースの関係や梅雨時期の天気の関係などで、室内に洗濯物を干す人も少なくありません。そうした部屋干しの際にも、シーリングファンは役立ちます。
部屋の空気を満遍なく循環させるシーリングファンによって、湿った空気と乾いた空気が絶えず動き続けるため、洗濯物を効率良く乾かすことができるのです。
気流が生じることで、洗濯物の乾きやすいところと乾きにくいところのムラが減り、結果として洗濯物を乾かす時間の短縮が期待できます。加えて、洗濯物を干す時間が短くなることで、洗濯物の臭いを抑えることにも効果的です。
洗濯物付近に湿った空気が滞留すると、洗濯物が乾くまでに時間がかかり、さらに臭いが発生しやすくもなります。そうした事態の解消にシーリングファンは有効であり、洗濯物が乾きにくい不便さの軽減にもつながります。
天気が悪い日が続くときや、洗濯物を外に干すスペースがない場合など、乾きにくい洗濯物が室内に長時間干されていると、思いのほか生活のゆとりを圧迫するものです。
シーリングファンを取り入れることは、日々の洗濯の苦をできるだけ減らすことにもつながるでしょう。
6.カビや臭いの抑制
洗濯物の室内干しにシーリングファンが効果的であることにも関連しますが、シーリングファンを使用することで、湿気を多く含む季節に、室内の空気が滞留することを防ぐことができます。
それによって、湿った空気が同じ場所に留まることが防げるため、カビの発生防止にもシーリングファンは役立つのです。カビが比較的発生しやすい、空間の隅など、空気が淀みがちな所にも、シーリングファンによって新たに空気を送ることができます。
カビの原因にもなる窓などの結露をできるだけ抑えたり、早く乾かしたりすることにもシーリングファンの利用はつながるため、室内を清潔に、快適に保つことができると言えます。
加えて、湿気や空気の淀みが原因で発生する室内の臭いも、空気を攪拌し循環させるシーリングファンによって、防いだり軽減させたりする効果が期待できるでしょう。
同時に、空間の空気を効率良く動かすシーリングファンは、空気清浄機の効果を高める働きも期待できます。
7.インテリア性に富む
シーリングファンは実用的な側面だけでなく、インテリアとして、その見た目が空間に好印象をもたらすという優れた一面を持っています。その実用的な効果を知らなくても、天井でシーリングファンが回っているだけで、どことなくお洒落な空間に感じる人も少なくないのではないでしょうか。
つまり、シーリングファンは空間の視覚的なアクセントとしても有効であり、インテリア性に富んだ空間の演出にも役立つのです。シーリングファンには様々な材質、色、デザインがあるため、住まいに合わせたものを選択することができます。
天井でゆったりと回る優雅な姿が印象的なシーリングファンは、実用性とお洒落さを兼ね備えた優れた設備です。体感的にも精神的にも、部屋を快適でゆとりある空間にするためにきっと役立つでしょう。
①空間の温度ムラをなくし、均一な体感温度にする。
②気流を生み、空間の広範囲に空気を循環させる。
③換気効率が上がり、空気を新鮮に保つのに役立つ。
④冷暖房を効率化し、電気代を抑えられる。
⑤洗濯物が乾きやすくなり、生乾き臭を軽減する。
⑥湿気の滞留により生じるカビや臭いを軽減する。
⑦お洒落さを演出するインテリア性。
シーリングファンが効果的な空間
シーリングファンは、様々な空間でその効果を発揮するため、多くの場所で役に立つ優れた設備です。ただ、シーリングファンの効果が特に得やすい空間もあるため、そうした場所ではさらに積極的に、シーリングファンを取り入れることが求められます。
天井が高い空間(吹き抜け)
シーリングファンは、吹き抜けをはじめとする、天井高が高めに設けられた空間に取り入れたとき、その効果をもっとも実感できるでしょう。
先にも述べました通り、暖かい空気は天井付近に、冷たい空気は床面付近にたまりやすいという性質があります。天井が高かったり、吹き抜けがあったりすると、当然、天井と床面の距離が通常よりも離れることになります。
つまり、天井高が高く設定されている部屋は、それだけ空間の上方と下方の温度差が生じやすいと言えるのです。
一般的な天井高や比較的低めに設定された天井高の部屋であれば、天井付近と床面付近に温度差が生じても、冷暖房を強めたり、扇風機や置き型のサーキュレーターなどを利用したりすることで、その温度差を解消できるかもしれません。
一方で、天井高が高い空間、特に吹き抜けを採用しているような空間では、冷暖房の強さや置き型のサーキュレーター等では十分な効果が得られないことも多いでしょう。
したがって、空間の空気を大きくかき混ぜ、効率良く空気を循環させるシーリングファンは、吹き抜けなど、天井高が高く設定された大きな空間には積極的に取り入れることが求められます。
加えて、吹き抜け空間と二階部分が直接、あるいは窓等でつながっている場合、冬場、一階で暖めた空気がすべて二階に行ってしまうということも十分に考えられます。
そうなると、一階はいつまでたってもなかなか暖かくならないという事態が起こり得るのです。さらに、一階が暖まらないだけではなく、二階に上がってみたら思いのほか温度が上がりすぎてしまっていて、暑く、生活に支障が出るということもあります。
そうなると、一階が十分に暖かくないのに、二階が暑くならないよう、一階での暖房使用を加減しなくてはならくなってしまいます。
例えば一階がリビングで、二階が寝室という間取りの場合、必要以上に寝室の温度が上がってしまうことで、夜間、寝苦しくなってしまうかもしれません。そうした事態を避けるためにも、必要な所を必要な分だけ暖めることに役立つ、シーリングファンが効果的なのです。
シーリングファンがあれば、二階部分へ上がる暖気の量を調節することも可能です。つまり、リビングなどがある一階を十分に暖めながら、暑くならない程度の暖気を寝室などがある二階へ送ることも、場合によっては可能でしょう。
こうしたことから、シーリングファンは、天井が高い空間を効率良く快適にすると同時に、住まい全体を住み心地の良い空気環境にする役に立つのです。
階段スペース
天井高を高めに設けている部屋や、吹き抜けがある空間と同じ理由から、階段スペースの天井部にもシーリングファンがあると、暖房効率や住まい全体の空気循環の観点から効果的です。
特にリビングに階段が設置されている間取りの場合も、シーリングファンは冷暖房の効率を高めるために役立つでしょう。
加えて、浴室の近くに階段がある間取りの場合、階段スペースにシーリングファンが取りつけてあれば、浴室から出る湯気などの湿気が二階へ上がることを防ぐ効果も期待できます。
冬場は、暖めた浴室の暖気が二階へ逃げてしまうことを防げ、また、湿度が気になる時期は、浴室から二階の居室などへ湿気が上がり、思いもよらず湿度が高くなってしまうといった事態を避けられると言えます。
二階に寝室やクローゼット、物置など、できるだけ湿気を寄せつけたくないスペースがある場合にも、階段にシーリングファンを取りつけることで、一階から上がってくる湿気を最小限に抑えられるでしょう。
また、二階と一階の空気を効率良く循環させるためにも、階段スペースのシーリングファンは有効です。したがって、クローゼットや物置など、空気が淀みがちな空間が二階にある場合にも、シーリングファンは効果的です。
窓が少ない空間(マンション)
間取りの都合で窓が少ない場合、室内の空気が効率良く循環しないこともあります。例えば、窓が一か所しかない場合、部屋の一面にしか窓がない場合、窓が小さい場合などは、思いのほか部屋の空気が滞留しやすいものです。
マンションなどの集合住宅は、その特性上、上記のような窓の条件に当てはまる部屋も少なくありません。そこで、マンションなど、自由に間取りを変更できない空間や、窓が設けられない空間にも、空気を攪拌するシーリングファンは有効です。
シーリングファンは天井高が高めの空間ほど効果的ではありますが、一般的な天井高であっても、十分に効果が得られます。間取りや窓の位置関係から、思うように空間の空気を動かせない場合には、天井高を問わずシーリングファンは有効でしょう。
天井高や床面積がそれほど高かったり広かったりしない場合、1台のシーリングファンから得られる攪拌効果は比較的大きいです。したがって、大空間でなくても、シーリングファンを取り入れるメリットはあるのです。
特に、立地の都合上、あるいは防犯などの観点から、あまり窓を開けず、エアコンを利用することが多いマンションの低層階などは、シーリングファンの効果を実感できると言えます。
加えて、一般的な天井高の部屋にシーリングファンを取りつけると、シーリングファンから生じる気流が、体に直接感じられることもあるため、春や初夏など、まだ暑さがそれほど厳しくないときは、シーリングファンの風だけでも涼しく過ごせることもあるでしょう。
マンションなどでも冷暖房の効率を高めると同時に、扇風機代わりにもなるなど、シーリングファンは必ずしも天井高が高い空間を有する戸建てにしか取りつけられないものでありません。
また、マンションだけではなく、似たような環境にある部屋がある場合には、天井高が低めの戸建てなどにも取り入れると効果的です。
高天井(吹き抜け): 天井と床の温度差が大きい、吹き抜けなどの天井が高い空間。
階段スペース : 一階と二階の空気を効率良く循環。必要に応じて、二階への空気の流入を抑えられる。
空気が循環しにくい空間 : 窓が少ないマンションや、窓を開けにくい環境にある住まい。
シーリングファンの選び方
デザイン
シーリングファンには、様々なデザインのものがあります。多様な選択肢になかから、取りつける空間の雰囲気に合った好みのものがきっと見つかるでしょう。
材質
シーリングファンには暖かみを感じるウッド調のものから、モダンな雰囲気を演出するメタリック調のものまで、多様な材質のものが選択できます。また、シンプルなプラスチック素材のものや、重厚感が漂うアイアン調のものも、求める雰囲気に合わせて幅広く検討することが可能です。
木の温もりをいっぱいに感じる住まいなら、木材を取り入れたシーリングファンを取り入れるのも統一感や馴染みやすさが生まれて、より、親しみのある空間を作り出すことができるでしょう。
洗練されたモダンな空間を演出したい場合は、白や黒を基調とした、シンプルでありながら重厚感のあるアイアン素材のシーリングファンを取り入れるのも素敵な選択です。
羽の枚数
シーリングファンの羽の枚数は、3~6枚ほどから選ぶことができます。なかでも、3~4枚の羽を備えたシーリングファンが多く、主流だと言えます。ただ、見た目の好みから、5~6枚のシーリングファンを選択する人も少なくありません。
羽の枚数によってシーリングファンの風量が変化することはあまりないため、デザインの好みで選ぶことも一つです。ただ、羽の枚数が多いほど、より細かい気流が生じやすくなり、柔らかな風を感じやすくなるという特徴があります。
デザイン性と併せて、風の感じ方にこだわりたいという人は、理想に合わせた羽の枚数を選択すると良いでしょう。
照明つきシーリングファン
シーリングファンには、照明を備えた種類も多くあります。天井に取りつけるというシーリングファンの特性上、同じく天井に取りつけるシーリングライトとスペースを取り合ってしまうことも考えられます。
また、照明とシーリングファンを両方取りつけることで、天井が混み合ってまとまりのない印象になってしまったり、天井が狭くなってしまったりする事態も想定できます。
そうしたときに、照明とシーリングファンが一体となったタイプのものを選択することで、上記のような問題を解消することが可能です。
シーリングファンに照明がつくと、単体のものと比べて印象が大きく変わるため、空間へのアクセント効果も期待できるでしょう。照明つきシーリングファンにも、様々なタイプやデザインがあるため、部屋の雰囲気に合うものを選択することができるでしょう。
○羽は3~4枚が主流。5~6枚は気流が細かくなり、風が柔らかくなるという特徴も。
○照明つきシーリングファンで、省スペース、インテリア効果アップ。
性能
シーリングファンは、一日中稼働させていることも多いため、その性能は生活にも直結します。暮らしをより快適にするため、性能や特性を理解しておくことは大切です。
モーター
シーリングファンには、DCモーターを採用したものとACモーターを採用したものがあります。一般的に、DCモーターは運転時に生じる音が静かであることが特徴です。
また、DCモーターは回転数の制御にも優れているため、ゆっくりとした回転とパワフルな回転を両立できるという特性も持ち合わせています。加えて、消費電力が抑えられるのもDCモーターの利点であり、ACモーターのおよそ半分の電力で稼働できるのも、DCモーターの特徴です。
静音設計、省エネ、パワフルな回転と穏やかな回転の両立などの点から、DCモーターを備えたシーリングファンの人気は高まっていると言えます。
一方、DCモーターのシーリングファンは、一般的に価格が割高であり、また、選択肢がACモーターのものと比べると限られるという注意点もあります。さらに、ACモーターは構造がシンプルであるため、小型のものも選択できるというメリットがあります。
静音性
モーターの種類とも関連しますが、シーリングファンの稼働音は、シーリングファンを選ぶ際の大切な要素です。通常、一日中回転させておくことの多いシーリングファンであるため、運転中に生じる音が大きかったり、気になったりするようでは、生活に支障が出てしまうでしょう。
また、回転速度によって運転音がどの程度変化するかも、購入前に確認しておくと安心です。暮らしを快適にし、ゆとりをもたらすために取りつけるシーリングファンが、かえって苛立ちの原因になることを避けるためにも、静音性の確認は重要です。
回転速度の調節
シーリングファンには、季節や部屋の環境などに合わせて、回転速度を切り替えられるものも多くあります。その調節間隔は、「強・弱」の2パターンのものから、「強・中・弱」の3パターンのもの、あるいはさらに細かく調節できる、4段階や5段階のものなど様々です。
暮らしに合わせて細かく回転速度を切り替えたい場合には、回転速度の調整機能の豊富さでシーリングファンを選択するのも一つでしょう。季節によっては柔らかい気流を求めることもあるので、冷暖房の効率のことを考えたパワフルな回転と使い分けられるものを選ぶのも良いかもしれません。
回転方向の切り替え
シーリングファンというと、一般的に天井から床方向へ風を送るというイメージが強いのではないでしょうか。もちろん、そうした使い方がされることも多いのですが、実はそれだけではありません。
求める効果によっては、逆回転、つまり床から天井方向へ風を送る必要もあるのです。例えば、冬場など、暖房効率を高めるためにシーリングファンを利用する場合は、天井に向けて空気を流した方が効率的なことがあります。
天井へ向けて送風することで、天井にぶつかった空気が壁を伝って床へ下りていき、再び床から天井に向かうという気流を作り出すことができます。暖気はそもそも上昇する性質があるため、天井へ送風することでその勢いを利用することができるのです。
そうすることで、より効率良く床面を含めた空間全体を均一に暖めることができるため、シーリングファンを逆回転する切り替え機能が役に立つ場合があります。
ただ、天井が高い場合や、シーリングファンから壁までの距離が遠い場合には、天井に向けて送風しても、床面まで空気が到達しないこともあり得ます。そうした場合は、従来の床方向への送風が効果的です。
したがって、一般的な天井高の部屋や、それほど天井が高くないマンションなどにシーリングファンを取りつける際は、回転方向の切り替えができるものを選ぶことで、季節に応じたより効率の良い利用が望めるでしょう。
仮に、冬場、天井高の低い部屋で床に向けて勢い良くシーリングファンを回すと、風がそこで過ごす人に直接当たってしまい、かえって寒く感じられることもあるため、そういった点からも逆回転は便利な機能です。
DCモーター : 静音性、回転の制御、省エネ性に優れる。
ACモーター : 比較的安価。種類が豊富。小型のシーリングファンに採用されることが多い。
○購入前に運転音の大きさを確認する。
○回転速度の切り替え段階の細かさを確認する。
○逆回転機能があると便利なときがある。
シーリングファンを設置する高さ
シーリングファンを取りつける際は、その効果を十分に得るため、取りつける位置を十分に検討する必要があります。一般的にシーリングファンは、床から少なくとも、210~220cm以上の距離が必要です。
ただ、床からの距離が遠すぎても十分な効果を得られないため、シーリングファンと床の距離は350~450cm以下にすることが望ましいでしょう。こうした目安は機種によっても異なるため、製品に応じて事前に確認しておくと安心です。
天井が高い場合、シーリングファンを直接取りつけると、床までの距離が遠すぎることも考えられます。そうした場合は、延長ポールを使用することで最適な位置にシーリングファンを設置することが可能です。
加えて、シーリングファンの羽の先端から一番近い壁までの距離は、一般的に、最低でも40~50cm以上空ける必要があります。ただ、機種によってこの距離は異なるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
○天井が高い場合は、シーリングファンに延長ポールを取りつけ、調節することが可能。
○羽の先端と壁の距離は40~50cm以上空ける。
取りつけ時の注意点
シーリングファンの購入後に、取りつけに関する問題が生じないよう、事前に確認しておくべき注意点を紹介します。
配線器具の確認
新築の戸建てや配線を含めたリフォームなど、事前にシーリングファンを取りつける計画がされている場合は問題ありませんが、後からシーリングファンを取りつける際には、設置できるかどうかを確認する必要があります。
特に、配線器具がすでに天井にあるかどうかで、取りつける手間が大きく変わります。
例えば、「引掛け埋め込みローゼット」や「フル引掛けローゼット」といった配線器具がついていれば天井に穴を空けずにシーリングファンを取りつけることができます。こうした器具は、主にマンション等の鉄筋コンクリート造の建物で使用されることが多いタイプです。
また、「角型引掛けシーリング」、「丸型引掛けシーリング」、「丸型フル引掛けシーリング」といった配線器具は、天井にネジで固定する必要はありますが、問題なくシーリングファンが設置できます。こうした器具は、主に戸建てやアパートなど、木造の建物で使用されることが多いタイプです。
天井の配線器具によってはシーリングファンが取りつけられない場合があるため、どういったタイプの配線器具がついているのか、確実に確認する必要があります。
天井の強度
軽量設計のシーリングファンや10kg以下のシーリングファンであれば、天井に特別な補強を施す必要がないことが多いと言えます。ただ、手で押すと簡単にたわむ天井や、傾斜を合わせた舟底天井、サオブチ天井、壁面には取りつけることができません。
取りつけが可能かどうか、自分で判断が難しい場合や心配な場合は、販売店や取りつけ業者に相談すると安心でしょう。
天井の傾斜
シーリングファンを取りつける天井に傾斜がある場合、取りつけ予定のシーリングファンがその傾斜天井に適応するかどうかを確認する必要があります。
特に、吹き抜け空間の天井には傾斜天井が採用されていることも多いため、そうした場所に取りつける際は、シーリングファンが何度の傾斜にまで対応しているかを確認することが大切です。
通常、それぞれのシーリングファンには設置可能な傾斜が記載されているため、それに従い、取りつけられるものを選択しましょう。また、水平の天井であれば、傾斜による設置の可否を心配する必要はありません。
シーリングファンの大きさ
一般的な天井高である、240cmほどの高さにシーリングファンを取りつける際は、できるだけ薄型のシーリングファンを取りつけると良いでしょう。シーリングファンは様々な好効果がある一方で、存在感が大きいことも確かです。
天井高がそこまで高くない天井に、厚みのある大きなタイプを設置してしまうと圧迫感が生じることがあります。日々の暮らしで、空間が狭く感じられ、圧迫感があると、息苦しく感じることもあるかもしれません。
また、低めの天井にシーリングファンを取りつけることで、思いのほか風を強く感じてしまうこともあり得ます。こうしたことから、天井高に応じたシーリングファンの形状やタイプ、設置位置を検討することが大切です。
一般的な天井よりも少々高めの天井高である、250~270cmほどの高さの場合でも、薄型のものが丁度良いかもしれません。ただ、好みによっては、もう少し厚みがあったり、ボリュームがあったりするものでも良いでしょう。
また、高めの天井高である、280~320cmほどの高さの場合は、ボリュームのあるタイプや吊り下げるタイプ、延長ポールを用いたタイプのものが適しています。
加えて、330cm以上の天井高を有する吹き抜けなどの空間には、長めの延長ポールを使用したシーリングファンが適しています。天井が非常に高い場合、空気の循環効率の点からも、見映えの点からも、天井に直にシーリングファンを取りつけることは望ましくありません。
お手入れ
シーリングファンを取り入れる際、気になるのが掃除などのお手入れではないでしょうか。天井についているという特性上、掃除が難しいのは事実です。ただ、シーリングファンは、お手入れの際に便利な昇降機能を取りつけることができます。
昇降機能があれば、手の届かない所に設置したシーリングファンの掃除も可能です。また、一般的な天井高に設置されたシーリングファンであれば、柄が伸びるタイプのハンディーモップなどでも問題なく掃除をすることができます。
シーリングファンが取りつけられる天井付近は、油汚れがつく心配があまりないため、定期的に積もった埃をハンディーモップで取り除くくらいでも問題ありません。
ただ、高い所に取りつけたシーリングファンに昇降機能がない場合は、お手入れを行う際に危険を伴うため、無理をせず専門業者に依頼すると安全です。
○天井の強度や形状(傾斜を合わせた舟底天井、サオブチ天井は要注意)を確認。
○天井の傾斜と、取りつけ予定のシーリングファンの適応角度を確認。
○シーリングファンのボリューム感と空間のバランスをとる。
○お手入れについても事前に考えておく。
快適な空気で心にゆとりを
空気は、絶えず住まいを満たし、そこで暮らす人を包む存在です。つまり、住環境の快適さを大きく左右するものが空気だとも言えるでしょう。そんな大切な空気を大きく攪拌し、住まいのなかを効率良く循環させてくれるのがシーリングファンです。
シーリングファンが空気をかき混ぜ、気流を生むことで、住まいの空気が一所に滞留したり淀んだりすることを防げます。そうすることで、快適な温度環境で暮らすことができ、また、家事の助けにもつながる効果が得られます。
柔らかな空気の流れのなかで過ごす時間は、まるでそよ風に吹かれるようにも感じられるかもしれません。暑さや寒さに悩ませることなく、穏やかな時間を過ごし、住まいを快適に保つために、シーリングファンは役立つと言えます。絶えず流れる空気は、きっと心にゆとりを運んでくれます。
まとめ:空気に寄り添うシーリングファン
天井に取りつけて室内の空気を攪拌し、効率良く循環させる働きがあるプロペラ状の設備をシーリングファンと言います。シーリングファンは空間の空気をかき混ぜ、気流を作ることで、絶えず住まいの空気を動かし続けます。
シーリングファンは、室内の温度ムラを減らし、冷暖房の効率を高めるなど、住まいを快適に保つために効果的です。また、洗濯物の部屋干しの時間短縮や、カビ、室内の臭いを防ぐ効果も期待できるでしょう。
天井高が高い空間に取りつけることで高い効果が実感できるシーリングファンですが、一般的な天井高の住まいでも有効に使うことが可能です。また、空間の雰囲気や求める機能に合わせて、様々なデザインや性能のシーリングファンを選ぶことができます。
実用面だけでなく、インテリア性にも富んだシーリングファンは、体にも目にも快適な暮らしを届けてくれるでしょう。ゆとりある時間を、穏やかな空気とともに過ごしてみてはいかがでしょうか。