【北窓】本当の実力「メリット3つ」多様な活用例~北窓のすすめ~

住まいを新築する際、理想の間取りやデザインを計画するとともに、どこに窓を設けるか検討することも大切です。

「なるべく明るい空間にしたい」、「大きな窓を設けたい」、「風通しを良くしたい」など、窓に関する要望は思いのほか多いのではないでしょうか。希望に則した窓を実現するために、方角別の窓の特徴を知っておくことは有益です。

窓を設ける際、一般的に人気があるのは、南側や東側でしょう。しかし、一方で、それほど重要視されなかったり、スポットを当てられなかったりする「北側の窓」にも優れた点があり、取り入れることで得られる大きな効果があります。

北窓のメリット3つ 

住宅の北側は暗く、窓を設けるメリットがない、そう考える人は少なくありません。しかし、北窓の特徴を理解することで、北窓の印象は大きく変わるかもしれません。新たに北窓という選択肢を得ることで、家づくりに幅や柔軟性を与えられるでしょう。

1.安定した明るさ

光が入り難く、暗い印象が強い住宅の北側ですが、実は北窓には安定した明るさが保てるという特徴があります。午前中や日中など、特定の時間に多くの光が射し込む東や南の方角とは異なり、北側は一日を通してムラのない明るさが得られます。

したがって、北側に窓を設けることで、日が沈むまでの間、穏やかな明るさを継続して確保できるのです。特定の時間帯に太陽の光がさんさんと射す方角の窓も魅力的ですが、同時に、ムラのない柔らかな明るさを確保できる北窓も魅力的でしょう。

2.大きな窓を設けやすい

日当たりの良い方角の窓をできるだけ大きくすることで、空間を明るくしたいと考える人は少なくありません。もちろん、住まいを明るくするために、採光を確保することは重要です。

ただ、射し込む光が強い場合、そのまぶしさや、室温の上昇を考えると、日当たりの良い南側の窓を必要以上に大きくするのはリスクを伴います。

しかし、住まいに大きな窓を設けたい、という気持ちは多くの人が持つ理想であり、空間に開放感をもたらすなど、大窓の有用性は非常に高いものがあります。

そこで、大窓により生じるリスクの回避と、大窓の魅力を同時に満たすのが、北窓だと言えるのです。住まいの北側は厳しい日射しに悩む必要がないため、存分に大きな窓を設けることが可能です。

北側の大窓であれば、日中、カーテン等で遮光する必要がなく、また、遮光のための窓辺の軒も必要ありません(軒が絶対にない方が良い、という意味ではありません)。北窓は暗いというイメージがあるかもしれませんが、ある程度の大きさを確保した北窓は、予想以上の明るさを採り込めるものです。

こうしたことから、大きな北窓は、「大きな窓をつけたい」、「明るさを確保したい」、「日中、カーテンを引きたくない」、「日射しによる室温の上昇を抑えたい」という要望を一度に叶えられる優れた窓だと言えるでしょう。

3.通風が確保できる

新築を計画する際、メインの窓を南側に設置することは少なくありません。したがって、南側の対となる北側にも窓を設けることで、住まいの風通しを格段に良くすることが期待できます。

季節や地域によって風向きは異なることが一般的ですが、それでも南北に窓を設けることで、季節や地域を問わず、比較的風通しの良い空間づくりが実現できるでしょう。

多くの家で、南側には積極的に窓を設けるため、その反対側の北側にも窓を設けることは効果的です。東西よりも、南北に窓を設けた方が、住まいの風通しは優れていると言われることが多いため、北窓は有益です。

また、必ずしもその限りではありませんが、南側や東側の窓と比較して、北側の窓は風を取り込むのに優れた窓だとも言われています。同時に、窓を開けておきたい暖かい季節は、北窓から室内に滑り込む風は心地良く感じられます。

○北窓は安定した柔らかな光が望める。
○住まいの北側なら、強い日射し、室温上昇を心配せず、大きな窓を設けられる。
○南窓と北窓が対をなし、南北の優れた通風の確保が期待できる。
○北窓から入る風は心地良い。

「南・東・西」窓の特徴

北窓には魅力的なメリットが多くあります。一方で、住まいの北側にだけ窓があれば十分だということではもちろんありません。北側以外の南、東、西側の窓のメリットとデメリットを紹介します。

南窓

メリット

住まいにおけるもっとも人気の高い窓が南窓でしょう。高い採光性があり、空間を明るくする効果があります。光を十分に採り込むことで、開放感やゆとりある空間づくりが可能です。南窓は外観にも大きな印象を与えるため、家づくりの要の存在だとも言えます。

デメリット

南窓のメリットである高い採光性が、デメリットとなることもあります。空間に射し込む光が強すぎる場合、日中、まぶしく感じたり、室温が上昇したりすることも少なくありません。まぶしさや暑さが原因で、住まいのメインとなる窓に、日中、カーテンを引かなくてはならないこともあるでしょう。

東窓

メリット

朝日をもっとも多く採り込むことができるのが東窓です。明るい窓というと南窓というイメージがあるかもしれませんが、東窓が設けられた空間は、午前中の明るさに優れています。

東窓から射し込む光は非常に明るく、その日射しは空間の比較的深い位置にまで達します。朝日だけではなく、午前中の光を活用したい空間には、東窓が効果的です。まだ気温が上がらない寒い朝も、東窓からの光によって効率良く室内が暖められるでしょう。

デメリット

朝を中心とした午前中の明るさが特徴の東窓では、午後や夕方近くの時間帯の光量が当然減少します。また、朝日が鋭い角度で室内に射し込むため、思いのほかまぶしく感じられることもあります。寝室に東窓を設ける場合、顔に朝日が当たらない位置にベッドを置くなど、配慮が必要です。

西窓

メリット 

一般的に住まいが暗くなりがちな夕方にかけての午後の時間帯に、採光を確保できるのが西窓です。夏場などの暑い時期には、午前から日中にかけて、比較的涼しい風を取り込むことが期待できます。

西窓に光が射し込む時間帯は、太陽の位置が低くなっているため、空間の深い所にまで光が届きます。午後や夕方、気温が下がり始める時間帯に長く光が当たるため、西窓がある部屋は夕方、比較的暖かく感じられるでしょう。

西日が苦手だという人でも、夜間に使用する浴室などであれば、光によって空間を暖めたり、乾かしたりと、西窓を有効に活用できます。

デメリット

西窓から射し込む西日は、赤みを帯び、独特の雰囲気があります。この雰囲気を好む人もいますが、同時にアンニュイな感覚に捉われる人も少なくありません。また、西日はその色味に加え、非常にまぶしく感じられるため、生活光として適さないこともあります。

加えて、西窓に限ったことではありませんが、光が強く、空間の深い所にまで達する場合、家具が焼けたり色褪せたりすることも少なくありません。

○南窓
・メリット : 採光性が高い。
・デメリット : まぶしく、暑く感じられることも。

○東窓
・メリット : 午前中の明るさ。光が空間の深くにまで届く。
・デメリット : 光が鋭くまぶしい。午後、暗く感じられることも。

○西窓
・メリット : 夕方近くまで明るい。光が空間の深くにまで届く。
・デメリット : 西日の独特な雰囲気。まぶしさ。
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北窓を活用してバランスをとる

それぞれの方角の窓の特徴を知り、北窓と組み合わせることで、より良い家づくりが可能です。

北窓はそれ以外の窓と比較して、目立った特徴がないように感じられるかもしれませんが、実はそれぞれの窓の欠点を補ったり、バランスをとったりできる窓でもあるのです。

例えば、南側に比較的大きな窓を設けたい場合、まぶしさや室温の上昇を抑えるために、遮光効果が高い軒を出すこともあるでしょう。そうした際、併せて北窓を設けることも一つの選択です。

深い軒は、重厚感やデザイン性の観点からも優れた効果を発揮し、南側の窓と一続きのデッキを設置する場合にもデッキの屋根となり効果的でしょう。一方で、深い軒を出すことで、思った以上に空間が暗くなってしまうことがあります。

特に、太陽の位置が高くなる夏場には、深い軒によって日差しが窓に届きにくくなり、空間が暗くなりやすいのです。そうした場合でも、北側に窓を設けておくことで、時間帯に左右されにくい安定した光を確保することができます。

つまり、北窓は、軒によって失われた南窓の光量を補う役割を担ってくれるのです。北窓を効果的に取り入れることで、その他の窓をより自由に、柔軟に計画できるのが、北窓の優れたバランス感覚だとも言えるでしょう。

明るければ明るいほど良いというわけでも、北窓だけあれば良いということでもなく、必要な所に適度な光量が得られる空間づくりが重要です。そのためにも、北窓を積極的に取り入れることは役立つでしょう。

○北窓にはその他の窓の欠点、光量を補う役割がある。
○北窓とその他の窓を組み合わせ、光量のバランスがとれた空間に仕上げる。

脱「水回りは北側に追いやる」という発想

新築住宅の計画で、水回り空間や設備はどうしても北側に追いやられがちです。それは、南側を中心とした明るい空間に、リビングや居室といったスペースを優先して配置するからでしょう。

しかし、リビングや居室といった、明るさを求める生活の場にも、北窓は有効であるため、必要以上に水回りを北側に配置することにこだわるのは危険でもあります。

水回りは、その特性上、外からの視線を遮るために窓を小さめにしたり、数を少なくしたりすることが一般的です。だからこそ、できるだけ高い採光が見込める方角に配置することで得られるメリットは多いと言えます。

水回りを北側に配置することで、リビングなどの空間に北窓を効果的に取り入れられなくなってしまうことは、住まう人にとっても喜ばしいことではないのです。

つまり、明るさを求める空間に北窓は必要ないと決めつけるのではなく、北窓の有効性を知り、積極的に取り入れることで、光や乾いた空気を求める水回り空間を、より日当たりの良い場所に配置できる可能性が高まります。

朝の身支度や家事などの際、水回りに自然光が入り込むと、非常に気持ち良いものです。明るい水回り空間であれば、朝、洗面台の電気を点けなくて済むということも十分にあり得ます。

顔を洗うときに電気を点ける必要がなくなるのは、思った以上に心身に与える影響が大きく、ゆとりのある暮らしにつながるでしょう。人工的な光ではなく、自然光の下、顔を洗ったり家事をしたりする暮らしは、日々繰り返すことだからこそ大切です。

こうしたことから、窓の数や大きさが限られる水回り空間こそ、効率良く光を採り込める方角に配置することが住まう人にとって良い効果をもたらすと言えます。

それでも、土地や要望の都合上、水回りが北側になる際は、できるだけ大きい窓を設置することで、北側であっても十分に採光が確保できます。曇りガラスを採用すれば、採光を確保しつつ、カーテンやブラインドを使用することなく外部の視線を遮断することも可能です。

大きな北窓を設けた水回りであれば、柔らかな光で空間を満たすことができるでしょう。そうすれば、やむを得ず北側に配置したのではなく、北窓の効果を得るためにあえて北側に配置した魅力的な水回り空間にすることができると言えます。

○水回り空間は窓の数、大きさが制限されやすい。
○効率良く採光を確保するため、水回り空間を日当たりの良い位置に配置することは効果的。
○生活空間に北窓を設けることで、水回り空間に日当たりの良いスペースを充てられる。
○大きな北窓があれば、北側の水回り空間も魅力的になる。
○水回り空間の自然光は生活にゆとりを与える。

北窓がおすすめの空間

・南窓からの十分な採光が望めない空間
・まぶしさや室温の上昇を避けたい空間
・大窓を設けたい空間
・吹き抜けに設ける大きな窓
・北側に配置された水回り空間(できるだけ大きな曇りガラスがおすすめ)
・強い日差しを求めない趣味を楽しむ空間(読書など)
・和室
・カーテンなどで遮光をしたくない空間
・パソコンなど、画面への光の映り込みを避けたい空間(書斎など)
・本棚がある空間(強い日差しによる本の日焼けを防ぐ)

北窓を取り入れて住まいにゆとりを

光は暮らしに彩りや開放感を与えてくれます。そのため、たっぷりと光を採り込むことができる窓は、住まいに欠かせません。一方で、その空間の利用目的と窓から得られる光量のバランスをとることで、暮らしがより穏やかなものになります。

のんびりと穏やかな時間を過ごす際、強すぎる日差しが余計なこともあります。読書をするとき、音楽や映画を鑑賞するとき、ゆったりとお茶をするとき、和室で時間を過ごすときなど、大きめの北窓があればそれだけで十分な場面は意外と多くあるものです。

北窓で十分というよりも、むしろ北窓が適していると言えるほどです。暗いと感じさせない適度な明るさは、心地良い明るさだと言えます。そして、そうした明るさを得るために、北窓を採用するのは有効です。

窓から射し込む光で濃い影が生じる場合、その光は人や生活において、少々強すぎる明るさだと言えます。北窓から入り込む光は穏やかなため、濃い影ができることはほとんどありません。このことからも、北窓の明かりは、住む人にとって心地良い明るさだと言えます。

北窓を優先順位の低い窓とするのではなく、柔らかな安定した光が得られる効果的な窓として理解することで、より自由に、柔軟に、そしてゆとりを持って家づくりをすることができるでしょう。

○北窓は柔らかで穏やかな光をもたらす。
○北窓の光は暮らしにゆとりを与える。
○北窓という選択肢は、家づくりを自由に、柔軟にする。
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まとめ:北窓の実力

住まいの北側に設けられた窓は、暗く、それほど効果的な窓ではないと考える人も少なくありません。しかし、実は北窓は、一日を通して安定した柔らかな光を住まいの空間に採り込むことができる、優れた窓です。

北窓によって、その他の方角に取りつけた窓の欠点や光量の不足を補うこともできます。リビングをはじめとする生活空間に積極的に北窓を取り入れることで、水回り空間をより効率良く光が採り込める位置に配置しやすくなるでしょう。

まぶしすぎない穏やかな明るさをもたらす北窓を、効果的に活用することで、固定観念に捉われないより柔軟な家づくりを行うことができます。そして、それはその家に住まう人にとって、心地良い明るさに満たされた空間づくりとなるでしょう。