【干し芋】自然な甘さが魅力「栄養・旬・種類」干し芋の色々なお話

「どうしてこんなに美味しいんだろう」と不思議に思うほど、魅力的な味わいがある干し芋。見た目や味に華やかさがあるわけではありませんが、それでもやっぱり美味しい、とついつい手が伸びてしまいます。

飾り気のない心地良さと、奥行きのある味わいが渾然となっているのが、多くの人を魅了する干し芋の魅力なのかもしれません。

「色々なお菓子があるけれど、結局、干し芋だよね」と、干し芋を口にする度に思う人も多いのではないでしょうか。そうした、人を惹きつける不思議な魅力を持つ、素朴な食べ物「干し芋」についてお伝えします。

干し芋について

「干し芋」という呼び方が広く親しまれていますが、干し芋には「甘藷蒸切干(かんしょむしきりぼし)」という名前があります。甘藷は漢名であり、中国でサツマイモを指す言葉です。

サツマイモが、中国から沖縄を経て、日本に広く普及した歴史が、干し芋の名称に漢名が用いられていることからもわかります。

また、甘藷蒸切干という名前の通り、干し芋は、サツマイモを蒸してから切り分け、干すという工程を経てできあがります。シンプルな作り方だからこそ実現できる、自然で素朴な、それでいて奥行きのある味わいです。

干し芋は、砂糖をはじめとする調味料や添加物を一切使用せず、原材料はサツマイモのみという自然食品です。作り方も原材料もシンプルだからこそ、美味しく作るためには人の手と自然の力が欠かせません。

○干し芋の正式名称は「甘藷蒸切干(かんしょむしきりぼし)」。
○原材料はサツマイモのみ。

作り方

 収穫後に一定期間寝かせて熟成させたサツマイモを、皮をつけたまま蒸す作業が、干し芋作りの最初の工程です。蒸しあがったら皮を剥き、スライスします。そして、天日でじっくりと干して乾かしたら干し芋の完成です。

天日干しは、1週間から10日ほどの晴天日を要します。時間をかけて乾かすことで、甘味をはじめとする美味しさがぎゅっと凝縮するため、十分に天日で干す作業は、干し芋作りには欠かせません。

干し芋作りの工程はシンプルですが、実は機械化が難しいという側面もあります。蒸したサツマイモの皮を丁寧に、そしてきれいに剥くには、やはり人の手が一番です。蒸したサツマイモは崩れやすいため、そうした点からも手作業が適しています。

サツマイモをスライスする作業も、効率良く切り分ける道具はありますが、やはり全自動ではなく、人の手が必要になることも少なくありません。加えて、天日干しの作業は、乾き具合に応じて上下を返すなど、きちんと人によって管理される必要があります。

食品用の乾燥機を使用すれば、数時間でサツマイモを乾かし、干し芋を完成させることができますが、じっくりと乾かすことで美味しさが凝縮する天日干しの味わいには敵わないという考えから、天日干しにこだわる製造者も多いのです。

乾燥機を用いて干し芋を作るメーカーでも、最終工程では天日干しを行うということも多く、こうしたことからも天日干しの重要性と、すべてを機械化せずに人の手で作ることの豊かさがわかります。

このように、一見シンプルに見える干し芋の製造工程ですが、実は、経験豊かな人手と自然の力が欠かせない、繊細な作業だと言えます。

〈干し芋を作る工程〉
①収穫したサツマイモを寝かし、熟成する。
②皮をつけたまま蒸す。
③皮を剥き、切り分ける。
④天日で1週間ほど干す。

干し芋の美味しさ

干し芋の最大の魅力は、素朴でありながら、自然な甘味を存分に楽しめる、その豊かな味わいではないでしょうか。すでに述べましたが、干し芋の原材料はサツマイモのみで、砂糖などによる甘味付けは一切されていません。

収穫後にサツマイモを貯蔵し、寝かして熟成させることで糖度が増し、また、丁寧にサツマイモを干して水分を飛ばすことでさらに甘味が増し、美味しさが凝縮されます。

干し芋の美味しさは、まるで、口のなかで干し芋ができあがるまでの過程を逆再生するように、紐解いていくような味わいの連なり、と言えるかもしれません。

干し芋を口にした瞬間、まず感じるのは、凛とした冬の乾いた空気と、そこに降り注ぐまばゆい太陽の光です。

干し芋の甘さやサツマイモの豊かな味わいといった魅力は、一口かじった段階ではまだそれほど強く感じられませんが、しかし、そうした自然の風味もまた、確かに干し芋の魅力でしょう。

そして、かじった際の食感も、干し芋の魅力を支える大切な要素の一つです。天日によって、適切な水分量にまで乾かした干し芋だからこそ得られるのが、この食感だと言えます。

しっかりとした歯応えと、ねっとりとした食感が同時に味わえるのは、天日干しによって絶妙な水分量になった干し芋ならではです。そして一噛みごとに変化する干し芋ならではの食感の後ろには、確かにサツマイモのホクホクとした優しさが見え隠れします。

干し芋を口に含み、しっかりと噛みながら味わえば、丁寧に蒸された干し芋の甘味や香りが、白い湯気と美しい黄色のサツマイモの姿とともに、口のなかを満たすでしょう。

加えて、様々な味わいと香りが複雑に混じり合い、どこかホッとした気持ちにさせてくれるのも干し芋の魅力ではないでしょうか。

秋に収穫したサツマイモを冬まで丁寧に貯蔵し、寒い季節を待って干し芋は作られます。秋から冬にかけて、時間をかけて作られる干し芋は、この季節特有の郷愁にも似た趣を帯びています。

こうした季節や時間を、口のなかで紐解き味わうことが、干し芋の甘味や香りに特別な要素を加え、心をホクホクとさせてくれると言えるでしょう。

○サツマイモを熟成し、丁寧に干すことで凝縮する甘味。
○しっとり、ねっとり、ホクホクの食感。
○噛むほどに深まる味わい。

「平干し」と「丸干し」

干し芋には、いくつかの形状があります。一般的に干し芋と聞いて思い浮かべる形状は、薄くスライスされたものではないでしょうか。この最も一般的な干し芋の形を「平干し」と呼びます。

平干しに対して、蒸しあげたサツマイモを切り分けずに、丸ごと干すのが「丸干し」です。丸ごと干すため、乾かすのに平干しの2~3倍の時間がかかり、なかには3週間近く干すものもあります。

完成まで時間がかかる丸干しは、平干しよりも流通量が少なく、価格も高いことが一般的です。しかし、その分食べ応えや満足感があり、強いねっとり感が楽しめます。

また、丸干しの表面近くと中心部では、水分量に差が生じます。したがって、水分量の違いによる食感や甘味、風味の違いを一度に味わえるのも、丸干しの魅力です。

干す時間を長く要すること、表面と中心とで水分量に差が生じることから、丸干しには比較的小ぶりなサツマイモが適していると言われています。

このように、非常に魅力的な丸干しの干し芋ですが、ただ、平干しと丸干しのどちらが美味しく感じるかは好みによるところが大きいでしょう。したがって、丸干しを食べたことのない人は、一度食べ比べてみるのも良いのではないでしょうか。

ちょっとしたリッチ感を楽しみたいという人にも、丸干しは適しているかもしれません。一方で、サツマイモの素朴な味わいや甘味、食感、干し芋らしさをより楽しみたい人は、平干しの方が好きだと感じるかもしれません。

加えて、平干し、丸干しのほか、棒状に切り分けた角干しや、皮をつけたまま輪切りにした円形の干し芋もあります。気になる形の干し芋を見つけた際は、是非一度食べてみてはいかがでしょうか。味わいや水分量に違いを見つけられ、きっと干し芋の魅力が広がるでしょう。

○平干し : 一般的な薄切りの干し芋。干し芋らしい味わい、食感が魅力。

○丸干し : サツマイモを切り分けず、丸ごと干したもの。完成まで時間を要し、比較的高価。表面と中心部で水分量が異なり、一度に違った食感、味わいを楽しめる。

干し芋の産地

干し芋の生産量が一番多い県は茨城県で、日本の干し芋の実に約9割が茨城県で作られています。茨城県は、サツマイモの生産量も多く、鹿児島に次ぐ全国2番目の多さを誇るため、干し芋とは切っても切れない関係性の県です。

このように、現在は茨城県が干し芋の生産量では群を抜いていますが、一方で、干し芋の発祥の地である静岡県も、干し芋作りが盛んな地域です。

静岡県は、冬、乾いた風が強く吹くことで知られ、この風は、遠州空っ風と呼ばれる、静岡県の冬の風物詩でもあります。同時にこの風が、干し芋作りに適した環境を作っているのです。

干し芋と言えば茨城県、というイメージが強く、事実、美味しい茨城県産の干し芋はたくさんあります。その一方で、干し芋は日本各地で作られていて、なかには干し芋と呼ばれていない、その地域ならではの呼び名のものもあるのです。

冬の晴天や海風、空っ風に恵まれた日本の様々な土地で、美味しい干し芋は作られています。例えば、茨城県をはじめ、静岡県、長崎県、三重県、愛知県など、干し芋作りに適した様々な地域で、美味しい干し芋がたくさん作られています。

加えて、群馬県もまた、干し芋作りが盛んな地域です。海風はありませんが、豊かな空っ風の恵みがあり、群馬県でも美味しい干し芋が作られています。

生産地に着目して、様々な干し芋を味わうことは、干し芋の味わいの幅を知ることにもつながるため、干し芋の新たな魅力の発見につながるかもしれません。

○干し芋の生産量は茨城県が最多。
○海風や空っ風があり、冬に晴天日が多い地域を中心に、日本各地で作られる。

サツマイモの品種

干し芋に使用されるサツマイモにはいくつかの種類があります。代表的なものを、3つ紹介します。

玉豊(たまゆたか)

玉豊は、干し芋に最も多く使用される品種です。玉のように豊満な形をしたサツマイモであることがその名前の由来であり、また、一度にたくさん収穫できる豊かさも、名前の理由です。

多くの新品種が登場するなか、玉豊は数十年にわたり干し芋用に生産され続けるなど、干し芋は玉豊で作ると言っても過言ではないほどの存在と言えます。

玉豊の干し芋は、噛むほどに味わいが深まる、その滋味深さが特徴です。次から次に手が伸びる、飽きのこない後を引く美味しさと、味わいの優しさ、様々な人に好まれる味は、正に干し芋の正統です。

紅はるか

紅はるかは2010年に登場した、比較的新しい品種です。既存のはるかという品種よりも、見た目や味が優れていることから、その名がつきました。紅はるかは、干し芋だけではなく、焼き芋や焼酎など、幅広い食品に用いられる人気の高いサツマイモです。

紅はるかの干し芋は、甘味が強く、ねっとりとした食感を楽しめるのが特徴です。また、紅はるかの干し芋は、美しい黄金色であり、この見た目の華やかさも紅はるかの人気を支える要因でしょう。

紅はるかの干し芋は、しっとり、ねっとりとした食感を求められることも多いため、従来の干し芋よりも水分量が多いこともあります。そうした場合、食感の豊かさの反面、保存性に劣り、賞味期限や消費期限が短いこともあるため、美味しいうちに早めに食べるのが良いでしょう。

紅はるかはその味わいと美しい見た目から、干し芋の品種としても人気が高く、紅はるかの干し芋の流通量は増加しています。したがって、紅はるかは、新たな干し芋の主流となりつつあるサツマイモです。

いづみ(泉13号)

いづみは古くから干し芋に用いられてきた品種ですが、現在では収穫量が少ない希少なサツマイモです。収穫量が少なく、栽培にも手間がかかることから、いづみの干し芋の流通量は極めて少ないのが現状です。

いづみの干し芋は、サツマイモのしっかりとした味わいがあり、豊かな甘さが楽しめ、玉豊とは違う美味しさがあります。また、ほど良い弾力がある、粘りに富んだ干し芋に仕上がるため、いづみの干し芋が一番だと言う人も少なくありません。

希少な干し芋であるため、目にする機会は少ないですが、見つけた際には是非食べてみてはいかがでしょうか。

○玉豊 : 干し芋に使用される最も一般的なサツマイモ。幅広い人に好まれる、後引く美味しさ。

○紅はるか : きれいな黄金色と強い甘味が特徴。新たな定番品種になりつつあるサツマイモ。

○いづみ : 生産量が少なく、希少価値の高い品種。玉豊とは異なる、甘味や食感が魅力。

干し芋の旬

サツマイモが収穫される時期は夏から秋にかけての8月~11月ですが、サツマイモを美味しく食べるには、干し芋に加工するかしないかにかかわらず、貯蔵期間が不可欠です。

甘味を引き出し、ホクホク、しっとりとした食感のサツマイモにするために要する熟成期間は、大体2~3か月です。したがって、収穫後、美味しいサツマイモが流通する時期は10月~1月頃でしょう。

そのため、干し芋の流通時期も10月以降になるのが通常です。また、干し芋には、冬の寒さや、良い気候、乾いた風が必要になります。こうしたことから、干し芋の旬は、サツマイモの熟成が完了し、気候の条件が揃う、12月~2月頃だと言えるでしょう。

干し芋の流通期間は10月~3月頃までと、比較的長い期間に及びます。しかし、天日干しにこだわった干し芋の旬という観点から考えると、サツマイモの状態と干し芋作りに適した冬の準備が整う、寒さの厳しい時期が干し芋の美味しい季節だと言えます。

○干し芋は、美味しいサツマイモが流通し始め、気候の条件が揃う12月~2月頃が旬。

干し芋の栄養価

干し芋には、食物繊維をはじめ、ビタミンやミネラルなど、豊富な栄養素が含まれています。

干すことで水分を飛ばして作られる干し芋は、その美味しさだけではなく、栄養価も凝縮されているため、栄養素によっては生のサツマイモや他のサツマイモ食品よりも多く含有されているものも少なくありません。

食物繊維

干し芋に限らず、サツマイモと聞くと、食物繊維が豊富、というイメージを持つ人も多いかもしれませんが、干し芋の食物繊維含有量は、生のサツマイモやその他の調理方法と比較して高くなります。

また、干し芋に含まれる食物繊維は、その量が豊富なだけではなく、バランスがとれていることも大きな特徴です。

食物繊維には、水溶性と不溶性の二種類があります。この両方の食物繊維をバランス良く摂取することで、便秘の予防や解消の効果が期待できます。つまり、食物繊維が豊富な食材であっても、その性質が水溶性か不溶性のどちらか一方に偏っていては、あまり効果的だとは言えないのです。

したがって、水溶性と不溶性の食物繊維を一度にバランス良く豊富に摂取できる干し芋は、お腹に優しい食品だと言えるでしょう。

ミネラル

体に大切な栄養素であるミネラルも、干し芋には豊富に含まれています。ミネラルのなかでも、干し芋のカリウムの含有量はとても豊富です。

カリウムは、食物繊維と同様、干し芋にすることで生のサツマイモや他の調理法と比較して、大幅に増加します。

カリウムは、体内の余分な塩分の排出を促進したり、血圧を下げたりする効果が期待できる、大切なミネラルです。また、カリウムには便秘の改善効果も期待できるため、食物繊維との相乗効果により、より高い効果が得られると言えます。

加えて、同じミネラルの仲間には、カルシウムやマグネシウム、リンが挙げられ、こうした栄養素もまた、干し芋には多く含まれています。

カルシウムやマグネシウムは、骨や歯の構成に深くかかわっていて、リンはこの二つのミネラルと結合し、骨や歯を丈夫にしたり、形成を助けたりする働きがあるのです。

マグネシウムはカルシウムの吸収を促進する働きもあることから、干し芋は骨や歯の形成を助け、丈夫にする効果が期待できる食品だと言えるでしょう。

さらに、干し芋には鉄分や銅も多く含有されていて、貧血の予防にも役立ちます。銅は、鉄の吸収や血液の生成に深く関与している、健康には欠かせない栄養素です。

ビタミン

干し芋に豊富に含まれるビタミンにはビタミンB1が挙げられます。ビタミンB1は、糖質からエネルギーを作り出す働きがあり、皮膚や粘膜を健康に維持する効果が期待できるでしょう。

加えて、干し芋には、ビタミンEも豊富に含まれています。ビタミンEには、抗酸化作用があり、老化を防止したり、動脈硬化を予防したりする効果があります。

また、ビタミンEは、干し芋に限らず、様々なサツマイモ食品にも多く含まれているため、サツマイモ好きには摂取しやすい栄養素だと言えるかもしれません。

最後に、風邪の予防や、体を元気に保つためにも大切なビタミンCも、干し芋には多く含まれています。骨粗鬆症の予防にも効果があると言われているビタミンCは、体の健康を維持する様々な働きに関与しています。

他のビタミンや栄養素と併せて、ビタミンCもまた、積極的に摂取したい栄養素です。

注意点

干し芋にはたくさんの栄養素が豊富に含まれています。ただ、栄養素はバランス良く、適量摂取することが大切です。したがって、干し芋の食べ過ぎにより、栄養素を過剰に摂取しないよう注意する必要があります。

特に、持病により、カリウムの摂取を制限している人もいるでしょう。そうした人が、干し芋を食べ過ぎると、体に悪影響を及ぼすことも考えられます。

栄養価が高く、体に嬉しい食品である干し芋の良さを、最大限に得られるよう、適量食べることを心がけることが大切です。

干し芋は、栄養素や美味しさが凝縮されている一方で、カロリーや糖質も多く含む食品です。生のサツマイモや他の調理法と比較して、干し芋はカロリーや糖質が高まるため、食べ過ぎには注意が必要です。

ただ、干し芋は、決して太りやすい食品ではありません。むしろ、食後、血糖値の上昇が比較的緩やかな干し芋は、実は太りにくい食品でもあるのです。

食後に血糖値が急激に上昇する食品は、一般的に太りやすい食品だと言われています。反対に血糖値の上昇が緩やかな食品は低GI食品と呼ばれ、比較的太りにくいことがわかっています。

そして、干し芋はこの低GI食品に該当するため、カロリーや糖質が高くても、ただちに太る食品というわけではないのです。

しかし、それでも、干し芋にカロリーや糖質が豊富に含まれていることに変わりはないので、糖質制限などを行っている人や、肥満傾向にある人は、食べる量や時間帯を意識することが大切です。

○干し芋には、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維が両方含まれる。
→便秘の予防、解消に役立つ。

○カルシウム、マグネシウム、リン、鉄分などのミネラルが豊富。
→高血圧の予防、骨の強化、貧血予防に役立つ。

○ビタミンB1、E、Cを含有。
→体や皮膚を元気に、健康に保つ。抗酸化作用、動脈硬化予防に期待できる。

○血糖値が上がりにくく、太りにくい食品(低GI食品)ではあるものの、栄養価が豊富な干し芋は、食べ過ぎないよう注意が必要。

「白い粉」の正体は甘さ

干し芋を食べる際、干し芋の表面が白くなっていることに気づいたことがある人も多いのではないでしょうか。これは、干し芋に含まれる糖分である、麦芽糖が、表面に浮き出て結晶化したものです。

したがって、干し芋の白い部分は干し芋の甘さの源とも言え、安心して食べることができます。

糖の結晶は、時間の経過とともに発生するため、完成したばかりの干し芋には見られませんが、数週間から1か月ほど経過すると、徐々に干し芋の表面に白い部分が確認できるようになります。

白い部分は糖ですが、サツマイモの品種によっては糖度が高くても糖の結晶化が遅いものもあります。したがって、白い粉が多い干し芋は甘い傾向にはありますが、一方で、白くないからと言って甘くないとは限りません。

表面が白い干し芋は、口に入れると、比較的早い段階で甘さが感じられるのに対して、白くない干し芋は、噛むうちに甘味が口に広がることが多いと言えます。

このように、白い干し芋とそうでないものを比較して、どちらが美味しいかではなく、それぞれに違った味わいがあると考えるのが正しいのかもしれません。

加えて、干し芋は時間をかけて干し、水分を飛ばした保存食品ではありますが、それでもカビが発生することがあります。

干し芋の白い部分は糖が結晶化しているものであることが多いですが、しかし、保存状況や時間の経過によりカビが生じる可能性があることも知っておくと安心です。

○白い粉は糖の結晶。安心して食べられる。
○干し芋の完成から数週間から1か月ほどで発生する。
○白い粉の現れ方は、品種によっても異なる。

干し芋の美味しさを引き立てる飲み物

ちょっと小腹が空いたときに、おやつに、小休憩に、干し芋はあらゆる場面で重宝する、あると少し嬉しくなってしまう食品です。

そんな干し芋は、干し芋だけを食べてももちろん美味しいのですが、相性の良い飲み物と一緒に味わうことで、その喜びはさらに深まります。

干し芋と一緒に飲むものと言うと、緑茶を思い浮かべる人も少なくないかもしれません。確かに、干し芋と緑茶の相性は決して悪いものではありません。ただ、ここでは、干し芋をほうじ茶やコーヒーとともに味わうことを提案します。

何が合って、何が合わないかは、個人の好みによるところが大きいので、正解や間違いはありません。したがって、選択肢の一つとして参考にして頂ければ幸いです。

ほうじ茶

ほうじ茶は、緑茶の一種ではありますが、茶葉が焙じられているため、独特の香りや味わいがあります。奥行きのある美味しさがある一方、その口当たりは柔らかく、ほんのりとした甘みを感じるさっぱりとした味は、干し芋の御伴におすすめです。

ほうじ茶は、その色合いが橙色を帯びた茶色であり、干し芋やサツマイモの旬である秋から冬にかけての時季から連想する色味に通ずるものがあります。

乾いた木や土、風を思わせる風味がほうじ茶にあることも、土や風に育まれた干し芋との相性が高まる一因かもしれません。

また、ほうじ茶は豊かな香りを存分に引き出すため、一般的に、他の緑茶よりも高い温度のお湯で淹れることが求められます。寒い季節に旬を迎える干し芋をかじりつつ、熱々のほうじ茶を少しずつすする時間は、正に至福です。

コーヒー

意外に思う人もいるかもしれませんが、干し芋とコーヒーの取り合わせも、なかなかに美味です。ほうじ茶とは異なるアプローチではありますが、コーヒーにも、木や土、風、雨、花などといった味わいの要素があります。

したがって、自然の恩恵をふんだんに浴びて作られる干し芋と、自然の香りに満ちたコーヒーとの相性もまた抜群です。

干し芋の御伴にするコーヒーは、柔らかな酸味があるものを選ぶのがおすすめです。一切の添加が行われない干し芋の味わいは、決して強いものではありません。そのため、コーヒーも、それほど強くない味わいのものを選ぶと良いでしょう。

中煎りや、浅めの深煎りのコーヒー豆を選択することで、干し芋とコーヒーの相乗効果が楽しめます。コーヒーの味わいとしては、優しい酸味があるもの、苦味が強くないもの、ほんのりと甘味があるものが適しています。

もしも、自宅にあるコーヒー豆が深煎りのものであっても、時間をかけず、手早く抽出することで、比較的あっさりとした、苦味を抑えたコーヒーを淹れることもできます。

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○干し芋は、ほうじ茶やコーヒーとの相性も良い。
○コーヒーは味の強すぎないものを選択するとなお良し。

干し芋の優しい甘さでくつろぐ

健康志向は大切なことですが、時には一つ一つの食材や食品を吟味することなく、食べたいものを食べたいときに、気軽に楽しみたいと感じることもあるのではないでしょうか。

何も考えずに、美味しいものを手軽に食べたい。そして、できれば満足感があって、罪悪感のないものが良い。そう考える人は決して少なくないでしょう。また、そう考えることは決して悪いことではありません。

干し芋の原材料はサツマイモだけです。砂糖も、化学調味料も、添加物も使用していない、体に優しい自然食品が干し芋です。

何も気にせず、美味しいものを食べながらホッと一息つく、そして満たされる、そんな時間が、生活にゆとりを持つためにも必要ではないでしょうか。そして、そうしたときの御伴に、干し芋はぴったりかもしれません。

健康は大切にしたい、けれど何も考えずに気ままに食べたい、そんな異なる思いを両立できる食品が、干し芋だと言えます。

頬や口がとろりととろけるような砂糖の甘さも素敵ですが、干し芋の優しい甘さも、実は同じくらい素敵な味わいです。

まとめ:甘くて優しい干し芋

干し芋は、サツマイモを蒸して、皮を剥き、切り分けてから干して乾燥させた食品です。原材料はサツマイモだけでありながら、豊かで優しい甘さが楽しめるのが、干し芋の大きな特徴です。

また、干し芋は美味しいだけでなく、食物繊維やビタミン、ミネラルといった栄養素を含む、体にも嬉しい食品と言えます。

干し芋は茨城県をはじめ、様々な地域で作られていて、使用されるサツマイモの品種によっても異なる味わいが楽しめます。加えて、ほうじ茶やコーヒーとともに干し芋を味わうのも違った趣きが楽しめるでしょう。

忙しい日々や、ちょっと休憩したいとき、干し芋を一口かじれば、きっと心にも体にもゆとりが訪れるでしょう。干し芋はそんな優しさを持つ、滋味深い食べ物です。