【アボカド】種から育てる方法「魅力・ポイント・注意点」

サラダや料理など、私たちの食生活にすっかり定着した食材の一つに「アボカド」が挙げられます。
その栄養素や、使い勝手、また、カフェご飯などで度々使用されるちょっとしたお洒落さが人気の理由ではないでしょうか。

そんな美味しい魅力のあるアボカドですが、実はその魅力は食べるだけにとどまりません。
自宅でアボカドを調理するとき、取り除いたアボカドの種の立派さに、「そのまま捨てるのは何だかもったいない」と感じたことがある人は少なくないのではないでしょうか。

実は、この種こそが、今回のお話の主役です。
ここからは、通常の観葉植物とは少しだけ違う魅力が味わえる、アボカドを観葉植物として種から育てるお話を紹介します。

今やアボカドは、スーパーマーケットなどで簡単に手に入れられる食材です。アボカド好きの人も、観葉植物好きの人も、また、そのどちらでない人も、これを機に、アボカドの「種」の魅力に浸ってみませんか?

アボカドについて

アボカドの種を育てる方法を紹介する前に、少しだけ、アボカドの基本情報に触れておきます。

アボカドの性質

アボカドは、日本でもアボカドと言うのが一般的ですが、和名をワニナシといいます。また、アボカドは中央アメリカが原産の高木で、季節にかかわらず葉がついている常緑種です。

また、アボカドは生長が比較的早く、樹高が高くなる植物です。そのため、家庭で観葉植物として育てる場合は、暮らしの空間に合わせた摘心が必要でしょう。原産地では30mほどになる木もあり、アボカドの実を生産するために栽培される木も20mほどに達することがあります。

家庭で育てる場合、気候など、環境の違いもあるため、そこまで高くは育たないことが一般的ですが、それでも、数メートルには生長するため、やはり摘心は重要な作業だと言えます。

加えて、アボカドは、花の雄しべと雌しべの成熟期が異なる雌雄異熟種です。したがって、花が咲いても、アボカドの木が1本だけでは結実することは難しく、仮に複数の木があったとしても簡単には受粉しません。

さらに、結実の確率を高めるためには、雄しべと雌しべの成熟するタイミングが異なる品種を数多く混植し、受粉する可能性を高める必要があるとされています。

こうしたことから、家庭でアボカドを栽培する場合は、観葉植物として栽培することが前提であり、実の収穫を目的とはしません。一方で、早ければ栽培開始から数年で開花することもあり、花を楽しむことはできるでしょう。なお、開花期は5月頃です。

アボカドの原産地

植物を育てる際、その植物の原産地に思いを馳せることは意外と役立つものです。
もちろん、原産地の環境をそのまま再現できるわけではないのは言うまでもありませんが、しかし、どういう環境を好む植物なのかを大まかにでも知ることは、栽培の助けとなります。
したがって、原産地を思い描くか描かないかの違いは決して小さくありません。

アボカドの場合、原産地は先述した通り中央アメリカです。中央アメリカは北アメリカ大陸の南部に当たる、細長い地域を指します。具体的には、メキシコの南東部のテワンペック地峡から、パナマ地峡の間の地域を指すことが多いです。北アメリカ大陸と南アメリカ大陸を結ぶ地域、と言うとわかりやすいかもしれません。

加えて、地峡というのは、大陸の両側に海が迫り、一部が極端に狭まった大陸の地形を言います。中央アメリカは、その多くが熱帯地域であり、雨量の多い高温多湿な地域が多くを占めることでも知られています。

○アボカド : 和名はワニナシ。中米が原産の常緑種。
○収穫を期待するのは難しいが、観葉植物として栽培可能。
○花期は5月頃。

アボカドを種から育てる魅力

実が収穫できないと、アボカドを育てる魅力が半減するように思う人もいるかもしれませんが、実のところ、そうでもありません。

もちろん、収穫を目的にしている人にとっては、結実しなければ魅力は半減どころではないですが、観葉植物として育てるだけなら、以下のような魅力が挙げられます。

一から育てる感慨

アボカドは立派に生長し、大きな葉をたくさんつける植物です。そんな植物を自らの手で、種から育てられるというのは、非常に大きな喜びです。どのような植物であっても、育てている株への愛着は大きいものですが、種から育てたものはひとしおかもしれません。

また、アボカドの葉は、パキラにも似ています。パキラは知名度も人気も高い、代表的な観葉植物の一つですが、そんなパキラにどことなく似た葉を持つ植物を、自分の手で一から育てられるというのは嬉しいものです。

普段、食品として買い、普通ならただ捨ててしまうアボカドの種が利用できる点にも、何とも言えない嬉しさやお得感があります。アボカドの種は大きくてずっしりと重く、ただ捨てるのは何となく忍びない、と感じたことのある人も少なくないのではないでしょうか。

いかにも生命の源然りという様を、捨てずに育て、大きな木に成長させられる感慨深さは、育てた人が味わえる大きな喜びです。

発芽の可愛らしさ

アボカドの種は、すぐに発芽するわけではありません。早くても、発芽まで1か月近くを要することが多い印象です。また、数か月かかってようやく発芽したという例も少なくありません。そのため、発芽するまでは「失敗してしまっただろうか」と不安になることもあるでしょう。

それでも、根気良く世話をして観察を続けていると、ある日種に発芽の兆候が見られ、それからしばらくすると、とうとう発芽するのです。そのときの嬉しさは想像に難くないでしょう。

発芽したばかりの姿は何とも心許ないですが、それでも、あれほど固い種をぱかっと二つに割って、根を出し、そして芽を出すのですから、そう考えれば頼もしくも感じます。時間をかけ、そんな健気な姿を見せてくれる発芽の瞬間は、とても可愛らしい瞬間でもあります。時間がかかるからこそ、発芽が成功したときの嬉しさもひとしおです。

選べる栽培方法「土」or「水」

アボカドを種から育てる場合、その育て方は主に二つから選ぶことができます。一つ目が種を土に植える方法、二つ目が種を水栽培で育てる方法です。どちらにも異なる良さがあるため、好きな方を選んだり、二つの種をそれぞれの方法で並べて育てたりするのも面白いかもしれません。

まず、種を土で育てるメリットには、管理のしやすさが挙げられます。発芽するまでは、水やりや霧吹きなどで水分を与え、表土や種の表面が乾かないようにすれば良く、発芽後も、すでに土に植わっているため、極小さな鉢でない限りは、早急な植替えも必要ないでしょう。

一方、水栽培では、水が腐らないよう、できるだけ毎日水を変える必要があります。この点は、土で育てる場合も霧吹きなどが必要なので、手間に差はないと感じる人もいるかもしれません。ただ、実際に育ててみると、容器や種を清潔に保つために、小まめな世話をしなければならない印象を持つ人もいるでしょう。

そうは言っても、水栽培にも大きな魅力があります。その最大の魅力は、何と言っても、種の様子がありありと見られることです。発根の様子や、発芽の様子など、細かな変化を観察できるのは水栽培ならではです。

また、発芽後も少しの間は水栽培を続けられますが、できるだけ早く土に植え直した方が、健やかな生長が期待できます。この点も、水栽培の方が手間がかかりますが、土で発芽させた場合も、遠からず植替える必要が生じるので、それほど大きな差ではないかもしれません。

加えて、種の変化を細かく観察できるのは水栽培ですが、一方で、土で栽培しても、発芽の様子はきちんと観察することができます。なぜならアボカドの種は、種の上側半分が土から露出した格好で植えるためです。

したがって、発根の様子は水栽培のようには観察できませんが、発芽の可愛らしい様子は、土で育てても問題なく見ることができます。

こうしたことから、種の管理や発芽後の管理をできるだけ簡単にすませたい場合や、できるだけ種の置かれる環境を発芽前と発芽後で変えたくないという場合は、土で栽培するのが適しています。

さらに、発芽までの種の様子を細かく観察したい場合や、毎日の世話、そして発芽後すぐの植えつけ作業などに不安がない場合は、水栽培を選択するのも素敵な選択でしょう。

このように、異なる二つの栽培方法が選べ、それぞれに違った良さがある点も、アボカドを種から育てる面白さ、魅力の一つではないでしょうか。

<アボカドの種を育てる魅力>
○普通は捨ててしまう種から、観葉植物が育てられる。
○大きく生長する植物を自分の手で一から育てられる。
○固い種が割れ、可愛らしい発芽の瞬間が見られる。
○種の栽培方法が選べ、観察にも適する。(土栽培、水栽培)

種を育てる

実際にアボカドの種を育てる手順を紹介します。土で栽培する場合と、水栽培する場合の手順を、それぞれお伝えします。なお、最初の項「栽培の適期」と、二番目の項「種を取り出す」は、土栽培、水栽培、共通の手順です。

栽培の適期

アボカドの種を育て始めるのに適した時期は、5月から9月頃の暖かい時期です。種は室内で育てることが多いため、この時期から多少ずれても育てられることもありますが、しかし、発芽までに数か月かかったり、発芽後の生育が芳しくないことも少なくありません。

特に冬季は、いくら室内が暖かくても、種を育て始めるには不適当です。できれば、20℃以上を保てるような環境で栽培すると、アボカドにとっては優しいと言えます。

また、観葉植物として育てるアボカドの種は、室内で育てることが多いですが、一方で、露地植えをする場合、または種を植えた鉢を屋外で管理する場合は、なおのこと5月から9月頃に行うと良いでしょう。加えて、適期に含まれていても、酷暑が続くような時期はできるだけ避けた方が安心です。

種を取り出す

購入したアボカドは、できるだけ冷蔵庫にしまう前に種を取り出すようにしましょう。スーパーマーケットなどで売られているアボカドは、冷蔵庫に陳列されていないことが多いため、家に帰ってからも、極端に種を冷やさないようにすると、栽培に好影響をもたらします。

種を取り出す際は、まず、縦方向(ヘタと下端を結ぶ線上)に包丁を入れます。そして、包丁の刃が種に当たったら、種を中心にぐるりと一周、アボカドを回転させるようにして切込みを入れましょう。

次に、包丁を外したら、切込みを軸に、アボカドの左右を両手でそれぞれ持ち、互い違いに捻るようにするとアボカドを縦半分に割ることができます。このとき、左右の実のどちらかに、種が埋まっていることが多く、続いては、この種を取り出す工程です。

種を包丁で取り出す場合は、包丁の刃の付け根付近の、刃が直角になった部分を使って取り出すことができます。包丁の角を種に突き刺し、包丁をねじるようにすれば、種を取り出すことができます。後は、注意深く包丁から種を取り外しましょう。

アボカドがまだそれほど熟していない場合、種と果肉がくっついていて、包丁を刺してねじっても、種がえぐれるだけで、取り出せないこともあります。そういう場合は、スプーンなどで種を取り出した方が簡単です。

また、普段からアボカドを調理する人は、種を取り出すことにも慣れているかもしれませんが、包丁の扱いに不慣れな人は、最初からスプーンを使うと安全です。

取り出した種は、回りのぬめりが取れるまで、十分に水洗いします。アボカドには油分が含まれているので、果肉に加え、そうした油分もきれいに洗いましょう。きれいに洗えていないと、発芽率が下がったり、栽培中の土や水が腐ったりする原因にもなります。

加えて、包丁を使用することで、種に傷がつきますが、栽培に影響はないので、心配する必要はありません。また、種についた切り傷が、時間の経過とともにかさぶたのように茶色くなったり、黒ずんだりすることもありますが、これらも特に心配いりません。

なお、種は乾燥に弱いため、順調な発芽を促すためにも、取り出しだ種はできるだけすぐに土に植える、または、水栽培を開始すると良いでしょう。

○種の栽培を開始する適期は5月から9月頃。
○買ってきたアボカドは常温保存(種を冷やさない)。
○取り出した種は、きれいに洗い、できるだけすぐ栽培を始める。

土に植える

<必要なもの>
○アボカドの種(きれいに洗ったもの)
○鉢(直径10~15cm程度)
○用土(市販の観葉植物用土)
○鉢底ネット
○鉢底石
○細い棒(割り箸など)
○移植ごて(小さなスコップ)
○じょうろ(水やり用)
○霧吹き(毎日の世話に便利)

準備

種を植える用土は、市販の観葉植物用土で問題ありません。また、準備する鉢は、少々大きくても差し支えありませんが、直径が10~15cm程度のものが扱いやすく、種にとっても適当な大きさと言えるでしょう。あまりにも鉢が大きすぎると、発芽後の根腐れの原因にもなるため、注意しましょう。

一方で、あまりにも種にぴったりのサイズを選ぶのも考え物です。アボカドの根は比較的生長が早く、鉢があまりに小さいと、根が窮屈な思いをして、生育に悪影響を及ぼします。したがって、種に対して、大きすぎず、小さすぎない鉢を選択しましょう。

用土や鉢が準備できたら、鉢の底に鉢底ネット、鉢底石を敷き、用土を鉢の半分ほどまで入れます。そこで、一旦種を置いてみて、種の真ん中ほどの高さまで土を入れた際、鉢の縁から2~3cm程度下の辺りに土の表面がくるか確認します。

このとき、鉢の縁ぎりぎりまで土がきてしまう場合や、あまりにも土が低すぎる場合には、種をどかして土の量を調整してください。なお、鉢の縁から表土までの数センチの空間をウォータースペースと呼び、水やりの際に大切なスペースですので、種を育てる段階から、きちんと確保することが大切です。

種を植える

土の高さに問題なければ、いよいよ種を植えます。このとき注意しなければならい、最も大切なことが種の向きです。種を横から見ると、やや尖っている部分と平らな部分があることがわかります。植える際は、尖っている方を上に、平らな方を下にして植える必要があるので注意しましょう。

種は、尖っている方から発芽し、平らな方から発根するので、上下が逆さまだと上手く栽培できません。したがって、種の向きはきちんと確認してから植えてください。

種の向きさえ間違えなければ、作業はいたって簡単です。準備した鉢と、丁度良い高さに調整した用土に種を置き、後は種の真ん中ほどの高さまで土を足します。このとき、用土を割り箸などで突いて、土のなかの隙間をなくすようにしましょう。また、種の周囲の土を、指で種に押し寄せ、固定するようにします。

ただ、種を半分ほど植えただけなので、安定が悪いように思えますが、最初はそういうものなので心配いりません。続いて、種を植え終えたら、鉢底から水が流れ出るまで十分に水やりをします。植えつけ直後は、流れ出る水に土が混ざっていて、特に汚れて見えますが、何度か水やりを行っているうちに、混ざる土の量も減少します。

管理

種を植えた後は、風通しの良い、明るい日陰で管理します。直射日光を当てる必要はありませんが、一方で、極端に暗い場所で管理すると発芽率が下がるので、やや明るい場所で育てることが望ましいです。

また、アボカドの種は乾燥が苦手です。表土が乾かないよう、1日1回は霧吹きで種と表土を湿らせます。また、土のなかの水や入れ替えるようなイメージで、1週間に1~2度ほど、水やりをするのも良いでしょう。霧吹きではなく、毎日水やりをしても問題ありません。

しばらくすると、種表面の茶色い皮が剥がれてくることがあります。無理に剥がす必要はありませんが、簡単に取れるようであれば、取ってしまっても構いません。皮がついたままでも剥がれても、どちらでも問題なく、育つにつれ自然と剥がれることが多いでしょう。

順調に生育すれば、1か月ほどで種の下半分が割れて発根し、次いで上半分が割れ発芽するでしょう。発芽の前触れとして、種の表面に薄らとした緑色が透けて見えることもあります。そこまできたら、発芽までもう少しです。

加えて、発芽までにかかる期間にはやや幅があり、2か月ほどかかる場合もあります。そのため、気長に見守ることも大切です。特に土で栽培する場合、発根の様子がわかりいくいため、発根の後に訪れる発芽までがより長く感じられるかもしれません。種も頑張って成長しています、辛抱強く見守ってあげましょう。

発芽後の育て方

発芽後は、鉢土が常に湿った状態にするのをやめ、一般的な観葉植物のように、鉢土が乾いてから水やりをします。表土が乾いてから水やりをするのが一般的ですが、アボカドは水を好む植物です、水切れには注意しましょう。

一方で、過湿気味に育てるのも良くありません。過湿気味だと感じる場合は、表土が乾いた後、鉢土に指を差し入れてみて、指の第一関節の辺りまで乾いてから水をやるなどすると良いでしょう。

また、アボカドは光を好む植物でもあります。そのため、室内では窓辺の明るい場所や日射しが入り込む場所に置きます。一方で、発芽してすぐの株を強い光の下へ置くのは禁物です。徐々に明るさに慣れさせるようにして、新芽を驚かせたり、負担をかけたりしないように注意しましょう。

加えて、アボカドの新芽は明かるい方へ向けて生長する習性が顕著であり、一日で茎が明るい方へ曲がることも珍しくありません。真っ直ぐと成長させるために、鉢を半転させるなどすると、一度曲がっても、また元に戻ります。あまり極端に曲げないようにするためにも、毎日少しずつ鉢を回転させるのも一つの対策です。

<土で育てる場合>
○種に対して、大きすぎず小さすぎない鉢を用意する。
○種の尖った方を上、平らな方を下にして、種を半分ほど埋める。
○植えた後は、水やりや霧吹きを毎日行い、明るい日陰で発芽を待つ。
○発芽までは通常1か月ほど要する。(2か月以上かかることもある)
○発芽後は、表土が乾いてからの水やりに切り替える。
○生長したら、徐々に光に慣れさせ、日当たりで管理する。
○新芽は光の方向へ伸び、曲がりやすいため、適宜鉢を回転させる。
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水栽培する

<すぐに必要なもの>
○アボカドの種(きれいに洗ったもの)
○容器(コップや瓶など、直径が種よりも少し大きなもの)
○爪楊枝 (竹串でも可):3~4本

<後々必要なもの>
○高さのある容器(根の生長に合わせて容器を変えることもある)
○鉢(直径10~15cm程度)
○用土(市販の観葉植物用土)
○鉢底ネット
○鉢底石
○細い棒(割り箸など)
○移植ごて(小さなスコップ)
○じょうろ(水やり用)

準備

水栽培で種を発芽させる場合でも、事前に準備するものはシンプルです。きれいに洗った種と、水と種を入れて栽培する容器、そして、種の支えとして使う爪楊枝や竹串などを3~4本用意すれば、水栽培が始められます。

また、水栽培用の容器を新たに買い揃える必要はなく、家庭にあるコップや瓶などで十分です。容器は、決して大きなものである必要はなく、一般的な大きさで扱いやすい200ml程度のものや、それよりも小さなものでも良いでしょう。コップの直径が種よりも少し大きければ問題ありません。

水栽培を開始する

まず、種の真ん中ほどの高さに、等間隔に爪楊枝を3~4本刺します。このとき、種が固く、少々力が必要かもしれませんが、少しずつ力を加えて刺していれば、それほど難しくなく刺すことができます。また、包丁を使って種を取り出したときと同様に、爪楊枝などによって種が傷ついても、生長には差し支えないため、心配はいりません。

次に、コップや瓶などに、爪楊枝で支えを作った種を乗せます。三本の爪楊枝がコップの縁にかかり、丁度、種がコップの中心で浮いたような格好になれば、後は、水を注ぐだけです。なお、土に植えるときと同様に、種の上下には注意しましょう。種を横から見て、尖っている方が上、平ら方が下です。

種と容器の準備が整ったら、種の下から1/3辺りまで水に浸かるように、容器に水を注ぎます。このとき、種の大部分を水に浸けたり、すべてを水に浸けると、種が腐ってしまい、発芽が上手くいかないため、水の容量は、きちんと確認しましょう。

管理

水栽培の場合、一番気をつけなくてはならないのが、水の取り換えです。水が腐敗しないよう、水は毎日換えます。万が一、種や容器の内側がぬるぬるする場合は、水が悪くなっている証拠ですので、速やかに種と容器をきれいに洗いましょう。水が腐敗すると、やがて種も腐ってしまうので、水栽培では水を清潔に保つことが求められます。

また、水栽培中の種の置き場は、基本的に土で栽培する場合と同じで構いません。直射日光が当たらない明るい日陰で、風通しの良い所が良いでしょう。そうした環境を、キッチンや洗面台に整えられるのであれば、水回りの近くに置くことで、水の取り換えが楽で、換え忘れも防げるのではないでしょうか。

発根後の育て方

水栽培を始めてから1か月足らずで、まず、種の底が割れ、発根する様子が確認できることが一般的です。発根までの期間には幅があるため、1か月足らずというのはおおよその目安です。

発根後も、そのまま水栽培を行い、発芽まで観察することもできますが、発根した段階で土に植え直すこともできます。水栽培の継続、土栽培への切り替え、そのどちらであっても、発根後に発芽します。

発芽まで水栽培を続ける場合は、根の生長に合わせて、容器を変更しましょう。アボカドの根は、中心に太くまっすぐ伸びる主根があり、それがいくつかに分かれ、さらにそこから側根(細い根)がたくさん生えます。したがって、この主根が窮屈な思いをしないよう、最初に小さな容器を選択した場合は、深さのある容器に変更する必要があります。

根の生長が著しい場合、あまり長い根を土に植えるのは大変な場合もあるため、心配な人はこの段階で土に植えてしまうのも一つの選択肢です。根が長いと、植つけの際に根を傷つけたり、折ってしまったりする可能性もあり、根に負担がかかりやすいとも言えます。

一方で、発根から発芽までの様子を細かく観察できるのも、水栽培の醍醐味です。したがって、様子をもうしばらく見守りたいという人は、発芽まで、あるいは発芽後もしばらくの間、水栽培を続けるのも魅力的でしょう。

土に植え直す

発根後、あるいは発芽後は、水栽培を終え、種を土に植え直します。植つける際は、基本的に「土に植える」の項でお伝えした要領で行います。まず、直径15cm程度の鉢を用意して、鉢底ネット、鉢底石、ウォータースペースを見越した量の用土を入れます(「土に植える」/「準備」の項参照)。

このとき、注意するのは、植えるのは単に種だけではなく、発根した種だということです。したがって、根の長さに合わせて、あらかじめ鉢に入れておく土の量を調整します。その後、種の真ん中ほどの高さまで土に植えます。

植つけの際、根を傷つけたり、折ったりしないよう、慎重に作業し、負担を最小限に抑えられるよう丁寧に行うことが大切です。

植え終えたら、割り箸などで、土を突き、鉢土の隙間をなくすイメージで、根に土を密着させます。その後、鉢底から流れ出るまで水を十分にやり、さらに根に土を密着させます。

その後は、土が乾いたら水やりを行います。詳しくは、「土に植える」/「発芽後の育て方」の項を参照してください。

<水栽培の場合>
○きれいに洗った種に、爪楊枝を3本刺す。(種の真ん中ほどの高さに、円周上を等間隔に3か所。)

○容器に爪楊枝を乗せ、種を容器の上に浮かせる。
○種の下から1/3程度の高さまで水に浸す。
○明るい日陰で管理する。
○毎日水を換える。
○発根、または発芽したら土に植え直す。(発根までの期間は1か月足らず。)
○土に植え直した後は、土栽培と同様に管理する。

露地植えする

アボカドは、暖かい地域であれば屋外で越冬できることもあります。したがって、種を露地植えして育てることも環境によっては可能です。

ただ、寒さや環境の変化に対応するためには、厳しい季節を前にある程度生長している必要があります。そのため、種を露地植えする場合には、5月頃、暖かくなったらできるだけ早く種を植え、栽培を開始すると良いでしょう。

種を植える際は、冬季のことを考え、霜や厳しい北風に当たらない場所に植えます。また、アボカドは光を好むので、日当たりの良い場所を選ぶことも大切です。

種は、上下の向きに注意して、半分ほどを土に植え、その後はたっぷりと水を撒きます。雨が降ったときは必要ありませんが、基本的に水やりは毎日行い、発芽を待ちます。

そして、発芽後も毎日水をやり、完全に根づいたら、極端に乾燥が続く場合を除いては水やりは不要です。しかし、それはある程度アボカドが成長してからの話で、苗木のような幼木のうちは、きちんと水やりを行います。

一方で、アボカドは本来寒さに弱い植物です。したがって、冬の寒さや霜に当たれば枯れてしまう可能性は高いため、露地植えに挑戦する際はそれほど期待し過ぎず、楽な気持ちで育てましょう。

なお、アボカドが土地や環境に合い、すくすくと育った場合は、非常に大きく育つため、必要に応じて剪定する必要があります。こうしたことから、種を露地植えする場合も、計画的に行うことが求められます。

<露地植えの場合>
○露地栽培は暖かい地域でのみ可能。
○暖かくなったらできるだけ早く栽培を開始する。
○冬季に霜、北風に当たらない場所、日当たりの良い場所を選ぶ。
○アボカドは耐寒性が低いため、越冬できず、枯れる可能性も高い。
○毎日水やりをする。
○発芽後、ある程度成長して、完全に根づいたら基本的に水やりは不要。

ちょっとひと手間ワンポイント「皮剥き」

アボカドの種には、茶色い皮があります。これを剥くと、中身はクリーム色に近い、黄色っぽい白色の姿をしています。種を育てる際、土に植える場合も、水栽培する場合も、基本的に皮を剥かなくても育てることは可能です。

一方で、皮を剥いた方が発芽率が上がるとも言われています。また、水栽培の場合は、腐敗しやすい皮を剥くことで、栽培の成功率を上げる効果もあるようです。こうしたことから、皮を剥いてから栽培に挑戦したいと思う人は、ひと手間ではありますが、皮剥きに挑戦するのも良いのではないでしょうか。

皮を剥くのは少々大変ではありますが、種をアボカドから取り出す際に、包丁でつけた傷や切れ目などから剥き始めると、比較的作業しやすいです。

○種の茶色い皮を剥くと、発芽率が上がる。
○水栽培の場合、皮を剥くことで、皮の腐敗が原因の栽培失敗が防げる。

種を育てる注意点

アボカドを種から育てる魅力は大きく、素敵な体験ですが、一方で、注意点もあります。それは、気がついたら株が増えすぎている可能性がある、ということです。こう書くと、不安になる人もいるかもしれませんが、決してアボカドが自然に繁殖するという意味ではありません。

言い換えれば、一度種を植え、育てる経験をしてしまうと、その感覚が癖になり、アボカドを買うたびに種を植えたくなってしまうということです。冗談めかして言っているようですが、これは意外と本当で、種を植えるワクワクが止められず、次々に種を植えてしまいがちです。

種のうち、幼木のうちは小さいため、あまり場所も取らずまだ良いですが、しかし、数年で大きく生長しますので、計画的に育てることが求められます。観葉植物好きの人は、大切に植物を育てる人がほとんどですから、邪魔になったら処分できる性格ではない人も多いです。

そうすると、暮らしの空間を圧迫されつつも、責任を持って育て続けなくてはならない、という気持ちで少々苦しむことになるかもしれません。

また、発芽に失敗するかもしれないという気持ちから、いくつかの種を同時に植えたくなりますが、その後、そのすべてが発芽するという場合も十分あるのです。アボカドの種は健気で、思いのほか高確率で発芽します。

こうしたことから、立て続けにいくつも種を植えるのは、考え物かもしれません。ただ、そうは言っても、そんな取りつかれるような喜び、快感が得られる観葉植物体験ができるのも、アボカドならではです。こうした注意点を踏まえ、計画的に、魅力的なアボカド栽培を楽しんでみてはいかがでしょうか。

○比較的大きく生長し、成長スピードも速いため、計画的に栽培する。
○癖になるアボカドの種栽培の魅力に取りつかれ、多数栽培しすぎないよう注意する。

キッチン発の観葉植物栽培

インドアグリーンとも呼ばれる観葉植物は、暮らしに豊かな彩りをもたらしてくれます。そんな観葉植物のなかでも、普段の暮らしに欠かすことのできない食事や料理に関連して、食材を余すことなく利用できるアボカドの種栽培に心惹かれる人も少なくないのではないでしょうか。

霧吹きで潤いを与えながら種を毎日観察して、発芽を心待ちにする日々は、なかなかに愛おしい時間の連なりです。また、水栽培を行えば、自由研究の観察をしているような、興味深く、ちょっとだけ不思議な非日常を味わえるかもしれません。

アボカドの種栽培は、一般的な観葉植物とは異なる手順や時間を、育てる人と種がともに過ごし、そして発芽し、大きく生長していきます。発芽する種の愛らしさを心待ちにする、そんな素敵な時間を体験してみるのも良いのではないでしょうか。

まとめ:アボカドの「種」を見事な観葉植物に

その栄養価や美味しさで人気のある食材、アボカド。そんな美味しいアボカドを切ると、実に見事な種が現れます。そして、この種は、土に植えたり水に浸けたりすることで、比較的高確率で発芽し、観葉植物として育てることができます。

アボカドの特性上、アボカドの収穫を目的とした栽培は難しいですが、葉は大きく茂り、迫力のある姿に生長するため、観葉植物として育てるにはもってこいです。

何より、立派な種をただ捨てるのではなく、有効に活用し、観葉植物として育てられるのは、アボカドならではと言えるのではでしょうか。また、発芽や発根の様子を観察できるという魅力も、アボカドを種から育てる素晴らしさの一つです。

アボカドが好きな人も、観葉植物が好きな人も、アボカドを調理する際に出るその種を、是非一度、捨てずに育ててみてはいかがでしょうか。