【介護リフト】「メリット・種類・選び方」ゆとりある介護のために

在宅介護をする人にとって、介護負担を少しでも軽減することは大切です。特に、身体的な介護負担を減らすことは、腰痛などの体の不調を予防、軽減することにつながります。

さらに、身体的な介護負担が減ることで、介護者の心的な負担を和らげることにもつながります。加えて、そうして生まれた介護者のゆとりは、介護される人のゆとりや、日々の自由度の向上にも良い影響を与えるでしょう。

介護者と被介護者の暮らしにゆとりをもたらし、質の高い介護の実現に役立つ福祉機器が、介護リフトです。介護リフトをより良く、便利に活用するために大切なことをお伝えします。

介護リフトとは

介護リフトは、被介護者のベッドから車椅子などへの移乗や、部屋から部屋への移動などに利用できる福祉機器です。人の力を必要とせず、リフトの力を使うことで、介護者の労力を大幅に軽減することができます。

介護リフトは、主に、リフト本体と、リフトの移動を支えるレール、そして、被介護者を包み込むネット状の吊り具、吊り具を引掛けるハンガーからなっています。

リフト本体は、レールに取りつけられ、そこからベルトを伸ばしたり巻き上げたりすることで、ベルトの下端に取りつけられている、ハンガーを上下させます。

そして、ハンガーに被介護者を包み込んだ吊り具を引掛け、再度ベルトを上下させることで、人力に頼らず、被介護者を昇降させることが可能です。

つまり、上から順に、レール、リフト本体、ベルト、ハンガー、吊り具、という構成になるのが介護リフトでは一般的です。ただ、介護リフトの種類によってはこの限りではありません。

例えば、リフトによっては、リフトとハンガーが一体になっているものもあり、そういった場合、吊り具をかける際、ハンガーを降下させると、同時にリフトも降りてくる仕様のものもあります。

さて、北欧を中心とする福祉先進国では、介護リフトの導入がすでに進んでいますが、日本では、まだ多くの介護現場に行き届いていると言える状態ではありません。

人の介護は人がするべき、という考え方をする人もいて、介護に機械の力を取り入れることに抵抗がある人もいます。人力による介護に必要以上にこだわる考え方は、結果として、介護者と被介護者の暮らしを圧迫することにつながりかねません。

機械の力を使うことは、決して人の心や温かみを失うことにならないのだということを多くの人が理解し、介護リフトの導入に積極的になることが、特に在宅介護の場では求められるでしょう。

○介護リフトは被介護者の移乗、移動を楽にする福祉機器。
○介護リフトを構成する要素
・リフト本体
・レール(支柱)
・ハンガー
・吊り具

3つのメリット

介護リフトを暮らしに取り入れることで得られるメリットは、介護する人、される人を問わず、非常に大きいと言えます。

1.介護者の負担軽減

介護リフトの導入で得られるもっとも大きなメリットが、介護者の負担を軽減できることです。移乗や移動を人力で行うのは、介護者にとっては大きな労力であり、積み重なる負担は体に蓄積され、不調となって現れることも少なくありません。

そうした身体的な負担を軽減し、体の不調や怪我をできるだけ避けられることは、日々の介護において非常に大きく、大切なことです。体に痛みがあったり、疲れていたりすると、余裕のある介護の実現が難しいこともあるでしょう。

人力に頼った介護を行っていると、疲れが蓄積しやすくなり、余裕のない介護の日々につながります。体に不調を抱えていれば、精神的なゆとりを欠いてしまうのも自然なことです。

介護リフトを取り入れることで体の負担を減らし、同時に心に負荷をかける頻度を減らすことは、ゆとりのある介護にきっとつながるでしょう。

2.被介護者の負担軽減

介護リフトが軽減するものは、介護者の負担だけにとどまりません。介護者が人力で介護をする際に感じる負担や痛みは、同時に被介護者が感じる負担や痛みであることも少なくないのです。

人力での介護をする際、力が上手に伝わる体の使い方ができる人ほど、介助が上手だと言えます。それでも体にかかる負担をゼロにできるわけではありませんが、負担を最小限にとどめることはできるでしょう。

そして、そうした介助ができる人に介護される人は、介助時に感じる体の痛みや負担が比較的少ないと言えます。つまり、介護で介護者が感じる負担は、決して介護者だけのものではないのです。

例えば、移乗の際、介護者が被介護者の腋の下に手や腕を差し入れて介助する機会は多いでしょう。そうした際、体重などといった負荷を、できるだけ分散させる介助の仕方ができていなければ、被介助者の腋の下には思いのほか負担や痛みが生じてしまうのです。

介護を受けているという遠慮の気持ちから、痛みがあっても正直に伝えられない人もいます。また、そもそも上手に意思を伝達できない人も少なくありません。そうした苦痛が積み重なることは、被介護者の心身の負担になりかねません。

こうしたことから、介護リフトを用いて介護者の負担を軽減することは、同時に被介護者の負担を軽減することにもつながると言えるのです。

3.被介護者の自由度の向上

介護リフトの導入により、介護者と被介護者が受ける体と心の負担を軽減することが期待できます。そして、それにより、自宅での被介護者の活動量の増加が図れます。

人力だけの介助では、車椅子などへの移乗や、部屋間の移動が大変で、億劫になってしまうこともあるでしょう。

これは介護される人にとっても同じで、自分自身が感じる身体的な負担と、介護者への配慮から、希望を十分に伝えることができず、結果として生活が億劫になり、活力が削がれてしまうのです。

そうした際、介護リフトが取り入れられた暮らしであれば、人力だけの介助よりも移乗や移動が格段に楽になります。介助が楽であれば、介護者はゆとりを持って被介護者に接することができるようになり、移動する機会の増加が期待できます。

介護が肉体的に辛いと、そんなつもりはなくても、知らず知らずのうちに顔が険しくなっていたり、言葉が厳しくなっていたりすることもあり、その大変さはどうしても被介護者に伝わってしまうものです。

そして、それを介護者がわかっているからこそ、後悔の念に捉われてしまい、明るく振る舞おうとさらなる無理を重ねてしまうことも少なくありません。そうした互いを思いやるが故の辛さを、介護リフトは解消してくれると言えます。

介護リフトがあれば、完全な寝たきりではない人が、介護事情によりやむを得ず寝たきりの生活になってしまうという事態を回避することに役立ちます。介護リフトにより、できる範囲内で活発に過ごすことで、被介護者の体力や活力を維持でき、家庭内での自由度を上げることにつながるのです。

それまでは諦めていた、自宅での入浴やトイレでの排泄などが、介護リフトによって実現できるケースも決して珍しくはありません。

また、テレビを見る、本を読むといった日常の活動も、ベッド上ですべてを行うか、時には椅子に座って行うかだけでも、生活に見出す希望の度合いは変わります。

加えて、被介護者の生活の自由度が高まることは、介護の日常にメリハリを与える効果も期待できます。メリハリとゆとりがある暮らしは、互いを思いやるが故に苦しむこともある介護者と被介護者にとって、とても大切なものではないでしょうか。

○介護リフトは介護者、被介護者の身体的、精神的な負担を軽減する。
○被介護者の暮らしにおける自由度が上がる。
○被介護者の活動量の増加が図れ、身体機能の維持につながる。

○在宅介護にゆとりが生まれる。
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介護リフトの種類

介護リフトは、暮らしやニーズに合わせて、いくつかの種類から選択することができます。介護者と被介護者の希望に合わせて、より良い選択ができるよう検討しましょう。

天井走行リフト

リフトが走行するためのレールが、天井に固定して設置してあるタイプを天井走行リフトと呼びます。

レールのタイプ(天井埋め込み/露出)

天井に設置するレールは、天井に埋め込めるものや露出して設置するものがあります。

自宅の新築や天井を含むリフォームなどを行う際、あらかじめ天井走行リフトを設置する計画がある場合は埋め込みレールを取り入れることも可能です。一方で、レールを埋め込めるかどうかはリフトメーカーによっても異なるので、事前の確認が必要です。

自宅などに、天井走行リフトを後づけする際は、露出でのレール設置が便利でしょう。また、天井面にレールを固定するためのボルト等の部品を目視で点検しやすいのも露出タイプのメリットと言えます。

レールの耐用年数は、一般的にリフト本体よりも長く、買い替えや取り替えが必要になるケースはほとんどありませんが、長期的なメンテナンス性を考えると露出レールは扱いやすいでしょう。

天井埋め込みタイプのレールは、取り替えが必要になった場合、天井工事を含めた大がかりな作業になるため、買い替えなどのケースが想定される場合には露出タイプが安心かもしれません。

ただ、天井埋め込みタイプであれば、天井からレールが出っ張らないため、圧迫感が少なく、すっきりとした空間に仕上げることができます。見た目の良さという観点では、天井埋め込みタイプのレールは優れています。

移動範囲(線レール型/面レール型)

介護リフトでは、一直線上のレールをリフトが走行する線レール型と、2本の固定レールと1本の移動レールを組み合わせることで、固定レール間のすべての範囲でリフトが走行できる、面レール型のどちらかを選択することが一般的です。

ベッドの位置や車椅子の位置など、被介護者の生活で生じる移動が一直線上で完結できる場合は、線レール型を設置することでシンプルなリフト設備が構築できます。

一方で、空間内の様々な場所へリフトで移動できた方が良い場合には、面レール型が便利です。

面レール型では、まず、天井に2本のレールが平行に直接固定されます。そして、その2本の固定レールにまたがる形で1本の移動レールが設置されます。

つまり、移動レールは2本の固定レールの下にぶら下がるように、垂直の位置関係に取りつけられ、2本の固定レールをつなぐ格好になります。

固定レール上を移動レールが走行し、さらに移動レールに取りつけられたリフト本体が移動レール上を走行することで縦横の自由な移動が実現でき、空間内のあるゆる位置への移動が可能になるのが面レール型の最大の特徴です。

したがって、室内での移動が広範囲であったり、被介護者の移動を一直線上に集約することが難しかったりする場合には、面レール型が役立つでしょう。

言葉だけでは伝わりづらいですが、線レール型が1本のレール上を移動できるのに対して、2本の固定レールのそれぞれの両端である、4点を結ぶ四角形の範囲内で移動ができるのが面レール型です。

加えて、面レール型を採用する場合、固定レールは天井埋め込みにすることが可能ですが、移動レールは必ず露出になります。

また、レールには、カーブレールやレールとレールの連結機能など、幅広いニーズにできるだけ応えられるようなオプションが、各メーカーで取り揃えられている場合もあります。

便利にすることに遠慮せず、諦めずに、様々な要望をメーカーや担当者に伝え、あらゆる情報を知ることも重要です。

注意点

天井走行リフトでは、天井にレールを設置するという構造上、天井に設置されるあらゆる設備に干渉しないよう注意深く検討する必要があります。

例えば、シーリングライトが取りつけてある場合は、レールの設置やレール、リフトの移動の妨げにならないかなどを確認することが求められます。

また、ダウンライトであればレールやリフトの走行を妨げる確率が下がりますが、露出レールのすぐ横にダウンライトが設置されていると、レールが照明の妨げになり、想定外の影を作り出してしまうこともあります。

据置リフト

天井走行リフトのように天井にレールを設置するのではなく、支柱を立ててレールを支えるタイプのリフトが据置リフトです。したがって、据置リフトでは、レールに加えて支柱という要素が加わるのが特徴です。

移動範囲(線レール型/面レール型)

天井走行リフトと同様、据置リフトでも線レール型と面レール型が選択できます。移動範囲が一直線上で問題なければ線レール型を採用します。線レール型であれば支柱の数はレールの両端に1本ずつで、合わせて2本です。

一方、面レール型の場合は、天井走行リフトと同様に、固定のレールが2本とそれをつなぐように設置する移動レールが1本必要になります。したがって、2本の固定レールを支えるためにそれぞれ2本ずつ、合わせて4本の支柱が必要です。

四角い間取りの部屋であれば、多くの場合、部屋全体の移動を実現させるため、支柱を部屋の四隅に立て、任意の向かい合う2面の壁に沿って固定レールを設置します。そして2本の固定レールの橋渡しの格好で移動レールを設置します。

浴室用リフト

浴室で介護リフトを使用することで、洗い場と浴槽の移動を容易にすることができます。また、洗い場と脱衣所をレールでつなぐこともでき、入浴介助の質や負担を大幅に改善する役割を担うのが浴室用リフトです。

浴室の形状に合わせて様々な構造のレール、支柱の立て方などがあるため、設置を検討する際は専門業者に実際に浴室を見てもらうことで、それぞれの環境に合ったリフトの導入が可能です。

新築や大がかりなリフォームの際は、天井走行リフトを浴室に設置することも可能ですが、浴室の密閉性や設置の簡便さを求める場合は、据置リフトの設置が一般的だと言えます。

浴室内のレールを脱衣所にまでつなぎたい場合は、浴室扉のサッシや扉上部の壁に切り欠きなどを設ける工事を行うことで実現が可能です。

一方で、浴室内のレールに、必要に応じて伸縮できるタイプの延長レールを取り入れることで、切り欠き等を作らず、脱衣所と浴室をつなぐこともできます。つまり、浴室への入退室の際にだけレールを伸ばし、入浴中はレールを格納しておくことができるのです。

延長レールであれば、浴室の扉や壁の工事は必要なく、切り欠きなどから湯気が出る心配も少ないでしょう。

加えて、延長レールを取りつける場合は、脱衣所のどれくらいの位置にまでレールを伸ばすことができるのか、レールの最大延長距離を事前に調べておくと安心です。

床走行リフト

床走行リフトは、キャスターなどの移動機能を有したリフトを指します。レールの設置が必要ないため、段差がなく、リフトが通れる幅を確保できる場所であればどこでも自由に移動できるのが床走行リフトの特徴です。

レールがいらず、移動範囲がレールの範囲内に制限されない自由度の高さがある一方で、リフトは比較的大型であるため、置き場所に困ったり、走行可能な幅を確保できる場所が限られたりするなどの注意点もあります。

加えて、レール上をリフトが移動するよりも、キャスターで移動させる床走行リフトは、移動の際に介護者が感じる負荷が大きいことが一般的です。

ただ、比較的広い空間で、レールを張り巡らせるよりも床走行できた方が都合が良い場合などは、床走行リフトも有効な選択肢の一つです。

ベッド固定リフト

ベッド固定リフトは、ベッドに固定して使用するリフトで、主にベッド周りの移乗に利用します。ベッドと車椅子間の移動など、特定の場所や機会で介護リフトを使用すると決まっている場合、ベッド固定リフトは使い勝手に優れています。

ベッドに固定された支柱を軸に、リフトが水平に円を描くようにして動く構造がベッド固定リフトでは一般的であるため、介助者は少ない力でリフトを動かすことが可能です。

加えて、あらゆる介護用ベッドに設置できることも、ベッド固定リフトのメリットです。

介護リフトの主な種類

○天井走行リフト
・天井にレールが固定でき、空間をすっきり仕上げることができる。
・レールは露出と天井埋め込みが選べる。
・線レール型(限定的な移動)と面レール型(自由度の高い移動)が選べる。
・様々なオプションレールもある。

○据置リフト
・支柱でレールを支える介護リフト。
・支柱を利用するため、天井工事の必要がない。
・天井走行リフト同様、線レール型、面レール型が選べる。

○浴室用リフト
・脱衣所と浴室間の移動や、洗い場と浴槽間の移動に使用する介護リフト。
・延長レールを使用して脱衣所と浴室をつなぐ機能も付随できる。

○床走行リフト
・レールを設置する必要がない。
・キャスター等で、平らな床面を自由に移動可能。

○ベッド固定リフト
・ベッド、車椅子間など、ベッド周りの限定的な移動に有効。

リフト選定「比較項目7つ」

介護リフトのどのような機能、性能を重視するかによっても選択肢が異なります。したがって、介護リフトの種類と併せて、特有の機能の違いを知っておくことも、リフト選定の役に立ちます。

1.昇降速度

リフトの昇降速度は、介護リフトメーカーによって異なります。リフトによって、昇降速度が極端に変わることはあまりありませんが、それでも毎日使用するものだからこそ、介護者と被介護者がともにストレスなく使えるものが求められます。

リフトを試用した際、被介護者が怖くない速度のものを選ぶことが第一に大切です。リフトによっては、昇降速度が速すぎて被介護者に恐怖感を与えてしまう場合もあり得ます。

一方で、スピードに対する恐怖感がない場合は、ある程度昇降速度が速いものを選択すると、介助する人にとって便利でしょう。

移乗や移動のため、リフトやハンガーを被介護者の所にまで下ろすときや、移乗や移動を終え、リフトやハンガーを邪魔にならない位置に片づける際などは、できるだけ速く昇降した方がありがたいと感じる場面は、日々の暮らしのなかで多々生じるものです。

そうした際、人が乗っているかどうかを感知して昇降スピードが変わるリフトや、操作リモコンのボタンの押し加減で昇降速度が変わるリフトもあるため、必要に応じて検討すると良いでしょう。

2.昇降ベルトの長さ

天井高が高い部屋に天井走行リフトを導入する場合は、レールから被介護者の生活空間の高さまでリフトが届くかどうか、昇降ベルトの最大距離を知っておく必要があります。

また、天井走行リフトでなくても、被介護者が畳部屋や布団で過ごすことが多い生活スタイルの場合、ベッド上で介護リフトを使用するよりも、より長い昇降距離が生じます。したがって、そういう場合においても、昇降ベルトの長さを事前に調べることが求められるでしょう。

3.鴨居を越える2本ベルトリフト

日本の住宅には、鴨居や下がり壁、梁など介護リフトの走行の妨げになってしまう建築が少なくありません。特に部屋から部屋への移動、脱衣所から浴室への移動など、レールを真っ直ぐに通すことが困難な場合があります。

そうした場合、大がかりなリフォームなどの工事を行わなくても、2本の昇降ベルトを備えた介護リフトを取り入れることで、部屋間の走行が可能になります。

鴨居や下がり壁を挟んでレールを直線上に2本設置することで、双方にリフトのベルトを装着し、リフトの走行を妨げる部分をリフトが飛び越えるようにして移動することが可能です。

学校のグラウンドや公園にある「うんてい」をイメージするとわかりやすいかもしれません。つながっていないレールがうんていの横棒だとすれば、それを上手に移動する子供の2本の腕がリフトの2本のベルトです。

レールを一続きに通すことが難しい空間で介護リフトを使用したい場合は、昇降ベルトを2本有するタイプのリフトを検討するのも一つの有効な手段です。

4.防水性能

介護リフトを浴室で使用する場合、リフトに防水性能があるものを選択する必要があります。一般的に、レールは浴室に対応しているものが多いですが、リフト本体は製品によって浴室では使用できないものがあるため注意が必要です。

また、リフトとつながっていることの多い操作リモコンの防水性能についても同様に確認しておくと良いでしょう。リフトが浴槽に着水してしまうことはあまり考えられなくても、知らず知らずのうちにリモコンが着水してしまうことはあり得ます。

場合によっては、リフトよりもさらに高い防水性能を操作リモコンに求める利用者もいます。

防水性能の等級は、IP規格に基づき表記されることが一般的です。防水の等級には、IP1~IP8があり、数字が大きいほど防水性能が高くなります。IPの後ろの数字が二桁である場合、左側の数字が防塵性能、右側の数字が防水性能を表します。

どちらか一方のみの規格の場合、無保護の方にはXが表記されることが一般的です。例えば「IPX5」であれば、防塵は無保護であり、防水性能の等級は5であることを示します。「IP5X」の場合はその逆で、防塵性能の等級が5で、防水は無保護です。

介護リフトを浴室で使用する場合、リフトの防水性能はIP4以上であることが求められますが、できればIP5~6の等級が得られている方が安心です。IP4は、水しぶきに対する防水性能を有しており、IP5~6は、シャワー等で直接水をかけた際の防水性能を有していることを表します。

加えて、水没に対して有効な等級はIP7~8ですが、ここまでの防水性能を備えた介護リフトはあまり一般的ではありません。

5.充電方法

介護リフトは、リフトを充電して使用することが一般的です。充電方法にはいくつかの種類があるため、それぞれの使い方に合った充電方法を選択することも使い勝手を大きく左右します。

まず、専用の充電器をコンセントとリフトの双方に差し込んで充電するタイプです。この場合、リフトのバッテリー残量に応じて、使用者が充電をする必要があります。

次に、操作リモコンをリモコンホルダーに差し込むことで充電されるタイプです。リフトを使用していないときに操作リモコンを格納しておくホルダーを、任意の壁面に設置し、そこにリモコンをつなぐことで自動的に充電される仕組みです。

さらに、天井走行リフトや据置リフトの場合、レールの内部に電極を組み込み、その電極上にリフトがある場合は常時充電ができるという充電方式もあります。電極の場所を限定することも、レール全体に電極を組み込み、リフトがどこにあっても常時充電が可能な状況を構築することも可能です。

充電を忘れてしまうと、いざ使いたいときにリフトが使用できず、暮らしに支障を生じかねません。したがって、充電の手間を減らしたり、充電忘れを防止したりしたい場合は、リモコンホルダーを用いた充電やレールを用いた常時充電システムを検討するのも有効です。

6.自走機能

被介護者をリフトで持ち上げた後、レール上をリフトで走行する際、介助者が押すことで手動で移動することが一般的ですが、操作リモコンでの自動走行が可能なタイプのリフトもあります。

介助者に、人が持ち上げられた状態のリフトを押して走行させる力がないときや、負担が大きいと感じる場合、あるいは被介護者本人がリフト上で走行の操作をしたいときに、リフトの自走機能は役立ちます。

一方で、手動走行の場合、吊り具に包まれた被介護者を押してリフトを移動させますが、自動走行の場合、被介護者の体を支えていない状況も考えられるでしょう。

そうした場合、リフトの発進、停止時に、極端なたとえではありますが、被介護者が振り子のように揺れてしまうこともあり得るのです。また、自動走行できるリフトを手動で押して走行させる場合、通常の手動走行のリフトよりも押す負荷が大きいこともあります。

7.操作リモコン(有線/無線)

操作リモコンは、リフトと線でつながっているものが一般的ですが、なかには無線タイプの操作リモコンもあります。

線でつながっていることで不便が生じる場合は無線リモコンは便利ですが、有線だからこそ浴室で操作リモコンの水没が防げることがあったり、リモコンの置き場所に困らなかったりするこもあります。

加えて、リモコンホルダーで充電する場合は、有線タイプであることが求められることも少なくありません。

さらに、利用者がペースメーカーなど、電波による悪影響が心配される医療機器を使用している場合、リフトと操作リモコンの無線機能が医療機器の動作に悪影響を及ぼさないかなども慎重に確認する必要があります。

無線リモコンのメリットとデメリットを比較し、利用者の暮らしに合ったタイプを選択することが大切です。

○介護リフト7つの比較項目

①リフトの昇降速度
②昇降ベルトの長さ
③障害物をリフトが越える機能(2本ベルトリフト)
④防水性能(IP規格1~8)
⑤充電方式(手動、リモコンホルダー、レール電極)
⑥自走機能
⑦操作リモコン(有線/無線)
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介護リフトがもたらすゆとり

自宅での介護に機械設備を導入するのは少々仰々しいと感じる人もいるかもしれません。しかし、介護リフトは確実に自宅介護を楽にし、介護者と被介護者にゆとりや笑顔をもたらしてくれるでしょう。

介護用品や福祉機器は、機能性を求めたものが多く、見た目へのこだわりを欠いたものも少なくありません。介護用品、福祉機器といった言葉から、そうした見た目やデザイン性の至らなさを連想する人も多いのではないでしょうか。

日々の暮らしのなかで度々利用し、触れるものだからこそ、見た目もできるだけお洒落で、暮らしに馴染むものを求めるのは当然のことです。

そうしたなか、介護リフトは様々な国のメーカーのものがあり、その選択肢も多様化しています。福祉先進国の北欧製の介護リフトには洗練されたデザインのものも少なくありません。もちろん日本製のリフトにも、インテリア性の高いものが発表されています。

その格好良さはリフト本体だけにとどまらず、レールや操作リモコンなど、細かなところにまで配慮が行き届いています。特にレールのデザインは、設置空間に与える印象を大きく左右するでしょう。

「このレールがお洒落だね」、「このリフトが格好良いね」など、まるでインテリアを選ぶようにして選択できる楽しみがある福祉機器が介護リフトだと言えるのです。

介護者と被介護者の暮らしをより良くするため、心にも体にもゆとりを持つため、素敵な介護リフトの導入はきっと魅力的な選択肢になるでしょう。

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まとめ:介護する人、される人の味方「介護リフト」

介護リフトは、人力に頼ることなく、機械の力で被介護者の移乗や移動を楽に実現する、画期的な福祉機器です。介護に介護リフトを取り入れることで、介護者と被介護者の双方の、身体的、精神的な負担を軽減できる効果が期待できます。

自宅での移乗や移動が手軽になることから、被介護者の暮らしの自由度が上がることも介護リフトの大きなメリットです。

介護リフトはそれぞれの暮らしに合わせた多様な種類を選ぶことができ、それぞれのリフトが有する機能や性能も様々です。したがって、あらゆるニーズに応じた選択が可能な福祉機器が介護リフトだと言えるでしょう。

介護リフトはデザイン性が高く、インテリア性に優れたものも多いため、選ぶ楽しさがあるのも、魅力の一つです。ぜひ、介護を楽にすること、便利にすることに遠慮せず、介護者、被介護者のために積極的な導入を検討してください。