【胡蝶蘭】育て方・水苔を使った植え替え~ポイントを丁寧に紹介~

その華やかさと、立派なたたずまいが目をひく胡蝶蘭。独特の美しさと存在感があるため、お祝いや贈り物としても人気です。せっかくもらった、または買った胡蝶蘭、花が咲き終わったあとどうするべきか迷ったご経験はありませんか?

胡蝶蘭は、適切に管理することでまた花を咲かせたり、長く育てたりすることができる植物です。
この記事では、暮らしに力強い華やかさをもたらしてくれる胡蝶蘭を、より長く楽しむためのポイントをご紹介します。

※長めの記事ですので、目次より必要な項目を選択していただくと便利です。

胡蝶蘭とは

胡蝶蘭は、ラン科に属する常緑多年草の植物です。ランには非常に多くの種類があり、日本では園芸上、東洋ランと洋ランに大別されます。そして、この記事で扱う胡蝶蘭は、洋ランに分類されます。

古くから日本で親しまれてきたランは、日本や中国が原産のもので、そうしたランを東洋ランと呼びます。一方で、欧米が原産であったり、欧米を中心に品種改良されたりしたランが、日本では洋ランと呼ばれています。

胡蝶蘭の原産地は東南アジアであることから、一見、胡蝶蘭も東洋ランに分類されるべきでは? と思われるかもしれませんが、東洋ランと洋ランの分類は、単に原産地だけに基づいているわけではなく、日本に伝来した時期をも関係します。

具体的には、原産地がアジア圏であっても、日本に伝わったのが明治以降であれば、それらのランは洋ランに分類されることが一般的のようです。したがって、胡蝶蘭は東南アジアが原産ではありますが、日本に伝来したのが明治以降であるため、洋ランの一種とされています。

もともと、熱帯地方や亜熱帯地方を原産とする植物であるということからも、胡蝶蘭が比較的暖かく、うるおいのある環境を好むことがわかります。植物の原産地を知り、その環境を理解することは、植物を育てるうえで、大いに役立つでしょう。

○ランは東洋ランと洋ランに大別される(園芸上)
○胡蝶蘭は洋ランに分類
○胡蝶蘭の原産地は東南アジア
○原産地にかかわらず、日本に伝来した時期によって洋ランに分類される

胡蝶蘭の育て方

胡蝶蘭を長く元気に育てるためのポイントを紹介します。

置き場所

胡蝶蘭は直射日光を避けた室内で管理します。レースのカーテン越しの光が当たる場所や、明るい日陰に置くのが良いでしょう。

夏は風通しの良い所に置き、冬は胡蝶蘭ができるだけ暖かく過ごせる場所に置くのが望ましいです。具体的に、冬季は、10℃以上を保つようにします。また、胡蝶蘭の生育適温はおおよそ20~25℃です。

風通しや温度を確保することは大切ですが、ただ、冷房や暖房の風が直接当たるような場所に置くのは避けてください。

胡蝶蘭は湿潤な地域が原産ではありますが、多湿が苦手な植物です。それは、胡蝶蘭が一般的な植物のように、土に根を張る植物ではないことが理由です。
胡蝶蘭は樹幹や岩壁、地上などに着生して、主に空気中の水分を吸収しています。そして、多肉な葉や肥厚した根に水分を蓄えるため、乾燥に強い性質を持つのです。

加えて、胡蝶蘭の原産地は高温多湿な環境であり、あまり日光が厳しく射しこむような場所ではありません。したがって、このように原産地を想像すると、胡蝶蘭がそれほど強い日射しを必要としない理由がわかるのではないでしょうか。

以上のことから、胡蝶蘭は乾燥に強く、多湿を嫌うため、風通しの良い明るい日陰で乾燥気味に育てることが求められます。一方で、空気中の水分は、胡蝶蘭にとって大切なエネルギー源となるため、詳しくは後述しますが、霧吹きなどで空気中の湿度を保つことも大切です。

<置き場所>
○直射日光を避けた明るい場所で管理

○夏は風通しが良く、冬は暖かく(10℃以上)を心がける
○冷暖房の風を直接当てない
○じめじめした環境は苦手

水やり

胡蝶蘭は多くの観葉植物とは異なり、観葉植物用土ではなく水苔を用いて植えられていることが多いです。その他にもバークを使用する生産者もありますが、比較的水苔が使われていることの方が多い印象があります。

胡蝶蘭に水をやるタイミングは、水苔が中心までしっかり乾いたときです。大まかな目安は、2~3週間に一度くらいではありますが、生育環境や個体によって水苔の乾き具合は異なります。したがって、あまり目安に捉われずに、ご自身の胡蝶蘭をきちんと観察することが求められます。

きちんと観察すると言っても、実は水苔の乾き具合を確認することはそれほど難しくありません。水やり直後や湿っているときの水苔と、乾いている状態の水苔とでは、目で見るだけでもわかります。

目視だけではなく、水苔を触ってみると、なお一層、簡単に確認することが可能です。湿っているときの水苔はやわらかくふくらんだ印象がありますが、乾くとカラカラ、パリパリとした見た目、手触りになります。湿っているときのふくらんだ様子もなく、細く繊維を感じる見た目になります。

また、水苔は通気性にも優れた植えこみ材であるため、外側は乾いているのに中心付近がいつまでも湿っている、ということが生じにくいといえます。そのため、水やりをするタイミングが一般的にわかりやすい植物ではないでしょうか。

以上のように、水苔を観察して、十分に乾いたことを確認したら、鉢底から水が流れ出るまで、たっぷりと水やりしてください。

胡蝶蘭は乾燥に強い植物です。必要以上の水やりは胡蝶蘭にとって大きな負担になりますが、乾燥によってすぐに枯れてしまうことはあまりないので、それほど水やりに神経質になる必要はありません。一般的に、胡蝶蘭は水やりの手間がかからない植物と言えるでしょう。

※植えこみ材にバークを使用している場合には、水苔と比較して水やり間隔が狭まる(頻回になる)ことが一般的です。

<水やり>
○水やりの頻度は少なめ
○水苔が中心までしっかりと乾いてから水やりをする

霧吹き

胡蝶蘭は鉢内の多湿を嫌いますが、一方で空気中の湿度を好む植物です。したがって、うるおいを保つため、毎日夕方ごろに霧吹きで葉の表面や裏側に水分を補うことも効果的です。霧吹きは水やりのように絶対に行わなければならない管理ではありませんが、胡蝶蘭の健やかな生長にはおすすめです。
その際、植物用活力剤のメネデールを100倍程度に希釈して霧吹きするのも良いでしょう。

胡蝶蘭は、夕方に、空気中の水分を取りこむために葉の気孔を開くと言われています。これは、胡蝶蘭の原産地では、夕方、湿った風が胡蝶蘭の生える山場などを一斉に吹き上げるため、それに胡蝶蘭が対応したことが理由ではないかという説が有力なようです。

したがって、葉の気孔が開く夕方に、霧吹きをするのが胡蝶蘭にとっても効率がよく、株のみずみずしさを保てるポイントです。

特に、冬場は胡蝶蘭の活動が鈍るため、おのずと水やりの頻度も少なくなります。そうしたとき、冬の乾燥から株を守る意味でも、冬の霧吹きは胡蝶蘭を元気に育てるために役立つでしょう。

<霧吹き>
○鉢の中の多湿は苦手、でも空気中の水分は好き
○霧吹きは必須ではないけれど、あると喜ぶ
○霧吹きは夕方が効果的
○特に冬場は霧吹きが有効
○メネデール希釈液を霧吹きすることも可
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水やりの注意点

管理がそれほど難しくはない胡蝶蘭ですが、水やりの際、気をつけなくてはいけない点が3つあります。

1.葉に水を溜めない

まず一つ目が、葉の中心に水をかけない、溜めないことです。胡蝶蘭は数枚の葉が株の中心を起点に重なり合うようにして広がっています。水やりの際、この葉の起点となる中心のくぼみに水をかけたり、水が溜まったままにしたりしないよう注意する必要があります。

濡れたままにしてしまうと、胡蝶蘭はそこから腐ってしまうことがあるため、万が一濡れてしまった場合には、ティッシュをこよりのようにするなどして、きちんと水分を拭きとるようにしましょう。

葉に水を溜めないためにも、水やりをする際は、上からざぶざぶ与えるのではなく、株元にやるようにすると良いでしょう。このとき、葉をすこし持ち上げることで、鉢の縁から意図せず葉に水が伝わっていくことも防げます。

加えて、霧吹きをするときにも、同様に、葉に水を溜めないよう気をつけてください。

2.冬は「くみおき」の水をやる

東南アジアが原産の胡蝶蘭にとって、日本の冬は少々厳しいものです。特に冬場の水道水は、胡蝶蘭にとっては冷たすぎます。したがって、冬、水やりをする際には、水道水を直接与えるのではなく、あらかじめくみおいた水を与えると良いでしょう。可能であれば常温、室温程度の水が好ましいです。

そうは言っても、日々の暮らしのなかでくみおきの水を用意しておくことなんてあまりないかもしれません。それに、胡蝶蘭の様子を見ていざ「水やりしよう」と思ったときに水をくみおくというのも、なんだか水やりのタイミングを逃してしまいそうです。

そうしたときには、水道水をお湯に切り替えて、ご使用のジョウロの1/4程度に30℃台後半~40℃くらいのお湯を入れ、残り3/4の量の冷たい水でジョウロを満たすというのも一つの方法です。こうすることで、簡単に冷たすぎない水を作ることができます。

冷たすぎる水と同様、温かすぎるお湯も植物には良くありません。したがって、お湯を与えるというよりも、冷たくない水を作って与えるという感覚を持つことが大切かもしれません。

また、上記のジョウロ内のお湯と水の分量はあくまで一例です。ご自身で作った水に触れてみて、冷たすぎないか、あるいは温かすぎないか確認してみてください。

少々抽象的で、冷たすぎない水、温かすぎない水ってどれくらい? と思う方も多いと思いますが、それほど神経質になりすぎる必要はありません。どうしても気になる方は、試しに一度くみおきの水を作り、実際に触って確かめてみるのも良いかもしれません。

3.水苔は必要以上に乾かしすぎない

水やりは水苔が十分に乾いてから、と前述しておきながら、今度は必要以上には乾かさないって、いったいどっちなんだ? と思うかもしれませんが、実はどちらも大切なことなのです。

水苔は通気性に優れた素材であると同時に、保水性が高いため、あまり頻繁に水やりをすると、胡蝶蘭の根が常に湿った状況下に置かれることになってしまいます。したがって、ある程度日にちをおいて、水苔の中心まで乾くのを待ってから水やりをすることはとても大切です。

一方で、水苔は乾燥状態が続き、過乾燥になると、吸水性が低下することがあるのです。その証拠に、乾燥しすぎた水苔に水やりをすると、水苔が吸水してふくらむよりも先にするすると鉢底から水が流れ出てしまいます。鉢底から水がたくさん流れ出ているのに、水苔はまだ十分に湿っていない、という事態につながります。

こうしたことから、水苔に植えた胡蝶蘭は、水苔が十分に乾いてから水やりをすることを心がけるとともに、必要以上に乾燥させることも避けるのが望ましいです。もちろん、過乾燥は、水苔だけでなく胡蝶蘭そのものにも負担になるので、注意が必要です。

<水やりの注意点>
○葉に水を溜めない、葉の中心に水をかけない(灌水、霧吹きともに)
○冬季、やる水は冷たすぎないよう調節する
○水のやり過ぎに注意
○過度の乾燥は胡蝶蘭、水苔ともに悪影響あり

肥料

胡蝶蘭は、花が咲いている期間は肥料を必要としません。花を長期間咲かせる胡蝶蘭ですから、体力を消耗するのでは? と心配になり、つい施肥したくなるかもしれませんが、しかし胡蝶蘭に開花中の施肥は不要です。

胡蝶蘭は、花が咲いている期間は肥料を必要としません。花を長期間咲かせる胡蝶蘭ですから、体力を消耗するのでは? と心配になり、つい施肥したくなるかもしれませんが、しかし胡蝶蘭に開花中の施肥は不要です。

では、胡蝶蘭の施肥はいつ行うべきかというと、花後の4~9月頃の生育期です。また、春先は気温がまだ上がりきらないこともあるため、最低気温が15℃以上になったら肥料を与えるようにします。

園芸店などで見てみると、洋ラン用と記載がある液肥が売られているので、それを使用するのがおすすめです。

ここで一点注意ですが、施肥期間を4~9月とお伝えしましたが、夏場の施肥は避けるのが胡蝶蘭にとっては安全です。したがって、夏の時期を避けた、生育時期に肥料は与えてください。

開花中は肥料を控える胡蝶蘭ですが、植物活力剤であるメネデールなら、開花期間でも問題なく使用することができます。メネデールを与えることで、咲いた花を長持ちさせられるでしょう。

加えて、夏場の施肥を避ける期間でも、メネデールであればたっぷりとやることが可能です。冬も、夏よりは回数が少なくなりますが、メネデールをやることは効果的です。

肥料が与えられる時期には肥料で生育を促し、与えられない期間や厳しい季節はメネデールをやりながら乗り越える、というのも良い選択かもしれません。

液肥の選択に悩んだ場合には、メネデールからも「メネデール洋ラン肥料」という液肥が発売されているので試してみてはいかがでしょうか。

さらに、冬場には、液肥を葉に霧吹きで与える「葉肥」も効果的です。冬には株元に直接施肥することは避けるのが無難ですが、週に一度程度の葉肥をすると、冬の乾燥が苦手な胡蝶蘭に勢いが出るでしょう。

<肥料>
○開花中の施肥は不要
○花が咲いていない生育期に肥料をやる(4~9月頃、最低気温15℃以上)
○洋ラン用液肥の活用がおすすめ
○冬季、葉肥も有効

花茎の処理

胡蝶蘭に必要な剪定の作業は、主に花茎の処理です。
花茎を切りとる際、今後、株をどのように育てたいかによって、タイミングや切る花茎の位置が異なります。

また、どのパターンを選択した場合でも、しおれた花をその都度こまめに取り除くことに変わりはありません。花首をつまんで花茎からひっぱれば、たいてい、簡単にぽろっと取ることができます。

加えて、花茎を切る際、花茎を誘引する支柱がついている場合には、一緒に引き抜いて構いません。株や根を傷つけないよう、株元や根元を押さえながらゆっくりと引っぱれば、簡単に抜けます。

1.株をできるだけ長く育て続けたい

株の負担を最小限に留め、株の消耗をもっとも抑えられる剪定をしたいという方に向けた剪定をまずお伝えします。

胡蝶蘭は開花期間が非常に長く、一つ一つの花がきれいな状態で長持ちすることが特徴です。一方で、たくさんの花を長期間咲かせておくということは、それだけ体力を消耗することを意味します。

胡蝶蘭をもらったり買ったりした場合、手元にあるのはもちろんプロの生産者によって育てられた胡蝶蘭ですから、見事な花がたくさん咲いているはずです。しかし、その分、株が必要とするエネルギーも大きくなると考えられます。

したがって、株の消耗を最小限に留め、できるだけ長く胡蝶蘭を育てたい場合、花がまだ残っているうちに花茎を切ってしまうことが望ましいです。

花がまだ咲いているうえ、花茎の先端付近にはつぼみがついていることも少なくないでしょう。それを見ると、花茎を切ってしまうのはかわいそうに思えるかもしれませんが、株のことを考えれば、花が半分から2/3程度終わった段階で花茎を切ってしまうのが理想と言えます。

株の負担軽減を最優先する場合は、花茎を根元から切りとります。花茎に残った花やつぼみは、水にさして切り花として飾ることもできます。花瓶に生けた胡蝶蘭は、鉢花のときとはすこし違った雰囲気でお部屋を明るくしてくれるはずです。

また、その方が、剪定した花やつぼみをそのまま捨ててしまうよりも、「もったいない」「かわいそう」といった気持ちが少しは軽くなるのではないでしょうか。

2.株も花も長く楽しみたい

せっかくもらった、あるいは買った胡蝶蘭ですから、できれば長く育てたいと考える方も少なくないのではないでしょうか。同時に、せっかく立派に咲いている花ですから、その華やかさを存分に楽しみたい、という気持ちもよく理解できます。

そういう方は、華やかですばらしい花を、ぜひ最後まで楽しんでください。最後の一つまで咲かせてから剪定するのは、当然、花を残した状態で剪定するよりも消費する体力は大きくなりますが、しかし、きれいな花を心ゆくまで愛でるのは、決して悪いことではありません。

また、すべての花を咲かせきったあとでも、花茎を根元から切りとれば、極力、株の体力を温存させることができます。

案外、このパターンを選ぶ方も多いのではないでしょうか。加えて、生産者によっては、できるだけ長く花を楽しんでもらいたいという考えから、このパターンをおすすめすることもあるようです。
したがって、花を咲かせておくと株が消耗してしまうのではないだろうか、とあまり心配しすぎることはないのではないでしょうか。

3.二度咲きを楽しみたい

花を長期間たっぷりと楽しみたいという方は、胡蝶蘭の二度咲きにチャレンジしてみるのも面白いかもしれません。二度咲きとは、その名のとおり、胡蝶蘭の花を二度咲かせることです。

株が元気で、体力が残っている場合、花茎を根元からではなく、先端の方で切ることで、二度咲きを促すことができます。先端の方というのは、具体的に、花茎の節を「根元から数えて三つ目の節の少し上」辺りを指します。

このとき、花茎の根元ぎりぎりに、一節目があると、そこから一節目と数えるべきか、その一つ上の節を一節目と数えるべきか悩むことがあるかもしれませんが、多くの場合、根元ぎりぎりではなく、その一つ上の節を一節目と数えて問題ないようです。

二度咲きと聞くと、何か特別な管理をしなければいけないようにも思えるかもしれませんが、実のところ、するべき作業はこれだけです。あとは、株が元気であれば自然と花芽がつくので、気長に待ってみてください。

二度咲きの成功率を上げるポイントは、開花中に花茎を切ることです。そうすることで株に体力を残すことができ、結果、二度咲きの成功につながりやすくなります。したがって、二度咲きをできるだけ成功させたい場合には、花が半分から2/3程度終わったら、花茎を切ると良いでしょう。

花が咲いていたり、これから開くつぼみがあったりすると切るのは少々忍びないかもしれませんが、切った花茎は、花瓶等で水に挿して観賞することもできます。

加えて、二度咲きのチャレンジをしても、必ず二度目の花芽がつくというわけではありません。二度目の花芽がつくことは決して少なくはありませんが、それでも二度咲きしたらラッキーくらいの気持ちで気楽に臨むのが良いかもしれません。

4.とにかく花を存分に楽しみたい

最後にお伝えするのは、とにかく存分に花を楽しみたいという方向けのパターンです。二度咲きをさせることは前項と変わりませんが、違うのは二度咲きの準備として行う花茎を切るタイミングです。

通常であれば、花茎に花やつぼみが残っているうちに花茎を切り、二度咲きに備えますが、一方で、いま咲いている花も最後まで楽しんで、その上、二度咲きも楽しむことも株が元気であれば可能です。

そういう場合は、花の最後の一つが終わるまで、花茎を切るのを待ちます。どうぞ咲いた花を最後まで楽しんでください。そして最後の花がしおれたら、できるだけすぐに花茎を切ります。切る位置は前項でお伝えした内容と同様、根元から三番目の節の上です。

お伝えした4パターンのなかで、この4番目のパターンは最も株の消耗が激しいですが、だからといって、その後必ず株が枯れてしまうというわけではありません。

また、花が残っているうちに花茎を切る場合と比べ、花がすべて終わってから花茎を切るのは、二度咲きの成功率という観点からは劣ります。

しかし、二度咲きを楽しんでみたい、でも、いま咲いている花も最後まで楽しみたい、開花中に花茎を切りたくない、という方は、試してみるのも良いかもしれません。

暮らしに彩りや華やかさを運んでくれる胡蝶蘭ですから、あまり、何が正しくて何が間違い、というような気持ちに捉われず、気楽にチャレンジするのもゆとりある日々につながるのではないでしょうか。

<花茎の処理>
1.株を長く育てたい場合
⇒花がまだ残っているうちに、花茎を根元から切り取る
2.株も花も長く楽しみたい場合
⇒花がすべて終わってから、花茎を根元から切り取る
3.二度咲きに挑戦したい場合
⇒花が残っているうちに、根元から数えて3節目の上で切り取る
4.花を存分に楽しみたい場合
⇒花がすべて終わってから、根元から数えて3節目の上で切り取る

1が株の負担がもっとも軽く、4がもっとも重くなります(軽1→重4)

「水苔」を使った胡蝶蘭の植え替え

胡蝶蘭をたっぷり楽しんだ後、植え替えを行うことで胡蝶蘭は長く育て続けられる植物です。花が終わっても、決して枯れたわけではなく、適切に管理すれば、翌年も花を咲かせることができます。

植え替えのタイミング

大きな鉢からそれぞれの株を取り出したり、植え替えたりする作業は、花が終わってからで問題ありません。胡蝶蘭が手元に届いたら、できるだけすぐにそれぞれの株を取り出して管理するべき、という考え方もありますが、そこまで神経質にならなくても良いかもしれません。

もちろん、それぞれの株を別々に管理した方が、通気性や水やりの観点からもメリットはあります。ただ、やはりプロの生産者の手によって仕立てられた胡蝶蘭は格別に美しいものです。したがって、そのとき咲いている花が終わるまでの期間であれば、その美しさに手を加えることなく、ひたすら観賞するのも良いのではないでしょうか。

花が終わり、花茎の剪定も済ませたら、植え替えの適期になるまで待ちます。
胡蝶蘭の植え替え適期は、最低気温が安定して15℃以上になってからです。3月や4月ですと、まだ冷え込む日もあるので、4月下旬や5月、あるいは6月でも遅くはありません。暖かくなったら、植え替えをしましょう。

また、株によっては、植え替え時期に花を咲かせていることもあります。そういう場合には花が終わるのを待ってからの植え替えでも問題ありません。開花中の植え替えは避けるのが安全です。

植え替え作業は、胡蝶蘭に限ったことではありませんが、水苔が乾いている状態で行います。水苔が湿っていると作業しにくいだけでなく、株に負担がかかることもあるので避けます。

加えて胡蝶蘭の植え替えは、一年おきに行うことが望ましいです。水苔が古くなると水持ちや通気性が悪くなるため、二年に一度は植え替えをするのが良いでしょう。

作業の前に

胡蝶蘭をもらったり買ったりした場合、3~5株が一鉢になっていることが一般的です(ミニ胡蝶蘭などの場合は、1~2株ということもあるかもしれません)。まずは、そうした一鉢に寄せ植えされている株を、すべてそれぞれの鉢に植え直します。

鉢の上から見ると、化粧材として、水苔やバークなどが表面に敷かれていたり、発泡スチロールが入っていることもありますが、そうした化粧材をどかしてみると、複数の株が確認できます。一つ一つビニールポットなどに植えられていることが多いため、取り出すのはそれほど大変ではありません。

以上のように、これから植え替える株の数や、大きさを確認し、鉢や、十分な量の水苔を準備します。

鉢の準備

鉢のサイズの目安は、大輪の株の場合は4.5~6号、ミディサイズのものであれば、2.5~4号ほどが丁度良いでしょう。

鉢は株に対してほんの少し小さめで、タイトに植えるのが一般的に胡蝶蘭には良いとされています。
加えて、用意する鉢は素焼き鉢が望ましいです。

水苔の準備

植え替えに使用する水苔は、園芸店などで簡単に手に入る乾燥水苔です。
水で戻して使うので、乾燥している状態よりも植替え作業時には増えるため、十分な量が判断しにくいかもしれません。

鉢の大きさや株の大きさ、根の具合によっても量は違ってくるため、一概に「○号鉢なら水苔はこれくらい」とお伝えすることができません。

ただ、一応の目安が水苔に記載されていることもあります。水でもどした際、その復元容量が何リットルになるか書かれている場合には、それを参考にすると良いでしょう。

例えば、乾燥水苔150グラムであれば、復元容量はおおよそ12リットルです。
この量の水苔で、4.5号鉢が3つ程度植え替えられます。

水苔の量が不安な場合は、園芸店で相談するのも一つですが、最初から少し多めに用意しておく方が安心です。作業を始めてから水苔が足りなくなると、きちんとした植え替えができないことも考えられます。少々無責任な言い方ではありますが、余分に買っておくと良いのではないでしょうか。

一方で、水苔は乾燥状態であっても、長期保存が難しいことが一般的です。もちろん、一度水で戻したものは保存することはできません。したがって、多めに用意する方が安心ではありますが、大量に買っておいて、余ったら次の植え替えに使うというのは現実的ではありません。

加えて、水苔はニュージーランド産のものが高品質であることが多いとされています。パッケージに産地とともに品質の等級が記載されているので、それを目安に選ぶと良いでしょう。

品質は1A(A)~4A(AAAA)まであり、Aの数が多いほど高品質であることを表します。
高品質のものは、少々高価であっても、水苔の一本一本が長いことが多く、不純物も少ないため、おすすめです。安価で一本一本が短い水苔は、植え替えがしにくいこともあります。

鉢底ネット/鉢底石

通常の観葉植物の植え替えとは異なり、胡蝶蘭の植え替えでは、鉢底ネットや鉢底石の使用は必須ではありません。ただ、鉢底ネットを敷いた方が、害虫の侵入を防げたり、水苔が飛び出したりすることは予防できます。したがってそう言った効果を望む場合には、鉢底ネットを使用しても良いでしょう。

加えて、水はけの観点から鉢底石を胡蝶蘭の植え替えにも使用することはありますが、これも必須ではありません。また、鉢底石を使用する場合、石の代わりに発泡スチロールを使うことも可能です。

では、前置きが長くなりましたが、準備が整ったら以下の要領でさっそく植え替えます。

手順は3ステップです。

ステップ1.水苔をもどす

まずは、乾燥した水苔を植え替えに適したふわふわの状態にもどします。
水苔をもどすため、お湯を沸かします。水やぬるま湯などでもどすことも可能ですが、本記事では熱湯を使用する方法をおすすめします。

もどす際は、たっぷりの水に水苔を浸し、不要な水分を絞るというのではなく、最初から水苔をもどすのに必要な量の水分のみ含ませるイメージで作業する方が、より良い状態の水苔を作ることができます。

もどした後に、不要な水分を絞ると、どうしても水苔がかたくなりやすいため、よりふわふわの水苔にもどすためにも、絞る手間をかけない方が良いと言えます。

また、水やぬるま湯ではなく、熱湯を使うことで、水苔の殺菌効果も期待できますし、何より熱湯の湯気が、水苔をゆっくりとふかふかな状態にするために一役買ってくれます。

大量の水に水苔を浸せば、短い時間でもどすことも可能ですが、本記事では、30分から1時間ほどかけてもどす方法をお伝えします。

具体的な手順をご紹介します。

まず、耐熱のお皿などに乾燥水苔を出します。お皿は大きめの素焼きの受け皿で十分です。ただ、熱湯を使用しますので、受け皿が割れたり、けがをしたりすることが心配な場合は、きちんとした耐熱製品を用意した方が安全です。

次に、乾燥水苔に少量の熱湯をかけます。このとき、やけどには十分気をつけてください。
この段階では、まだ水苔の全体が湿っている必要はありません。大部分が乾燥した状態なのが正解です。

含ませた熱湯から立ち昇る湯気が、徐々に水苔全体に広がっていくイメージで少し時間をおきます。
熱湯をかけた水苔に手で触れられるくらいになったら、やけどに気をつけながら、軽く水苔をほぐします。まだ乾燥している部分が多いため、無理にほぐすと水苔が切れることもあるため、できる範囲でほぐしましょう。

それが終わったら再び少量の熱湯をかけ、水苔に湯気を含ませていきます。
乾燥水苔のかたまりの内側から、湯気がじんわりと広がるようなイメージで、ゆっくりと時間をかけてもどすのが、胡蝶蘭が喜ぶ水苔作りのポイントです。

少量の熱湯をかけ、時間をおいてやさしくほぐすという作業をくりかえすことで、最終的にふかふかでふわふわの水苔にもどすことが可能です。
熱湯と湯気でもどした、絞るような不要な水分を含まない水苔は、触っていて本当に気持ち良いものです。ぜひ、この方法を試してみてください。

ステップ2.株を鉢から抜く(古い水苔の除去/根の整理)

※画像はイメージです。胡蝶蘭ではありません。

水苔の準備が整ったら、次に胡蝶蘭を今まで植わっていた鉢やポットから抜きます。
鉢底穴から押し出したり、ゆっくりと株を引っぱったりしながら、丁寧に鉢から株を取り出します。

なお、植え替え作業は、水苔が乾いている状態で行いましょう。その方が鉢から抜き出しやすいですし、株に思わぬ負担をかけずにすみます。水苔が乾いていれば、たいていの場合、簡単に抜き出せるでしょう。

鉢から株を取り出したら、まず、根についた古い水苔を取り除きます。
それから、併せて根の整理も行います。黒ずんだ根、枯れた根、細くなった根、しわが寄った根、糸状の繊維だけになった根、そうした健康ではない根を、植え替えを機に切り取りましょう。

根を切る際は清潔で良く切れるハサミを使います。火であぶったり、アルコール消毒したり、洗剤で洗ったハサミが望ましいです。

ここまで終えたら、いよいよ新しい鉢に植えつけます。

<ちょっとワンポイント>
古い水苔を外し、根の整理をし終えた株をメネデールを100倍に希釈した液に30分ほど浸すのも有効です。その際、葉が液に浸からないよう、根だけを浸けるように注意します。

ステップ3.新しい鉢に植える

新しい鉢に株を植える前に、胡蝶蘭の根にステップ1で準備しておいた水苔をたっぷりと巻きつけます。巻きつけるといっても、水苔を根の周囲にぐるぐる巻くわけではありません。

まず、片手で葉と根の境目辺りを持ちます。それから、持った手と株の間に水苔を挟むようにして水苔をつけていきます。巻きつけるというより、縦方向にぶら下げていくようなイメージです。

かえってわかりにくい例えかもしれませんが、フラダンスのときに着用するようなリーフスカートや、柄にたくさんの枝がくっついた竹ぼうきのようなイメージで、軸となる株にたくさんの水苔を縦方向にぶら下げます。

作業時、等級の高い水苔だと、毛足の長いものが比較的多いため、上手に根に巻くことができます。等級が低く、毛足が短いと、効率良く根に巻けないこともあるため、こうした点でも、等級の高い水苔を選ぶメリットがあります。ただ、水苔は自然のものですので、等級が高ければすべての毛足が必ず長いというわけではありません。

水苔を巻いたとき、株が植えつける予定の鉢よりもやや大きめになってしまってもかまいません。むしろ、少々きつめに植えつけるのがポイントですので、鉢よりも大きくなっている方が正解です。

次は、いよいよ植えつけです。

必要と判断した場合には、植えつける前に鉢底ネットや鉢底石を敷きます。
それから、片手で水苔を株に保持しておくのは少し大変かもしれませんが、うまく水苔を根にくっつけた状態で、新しい鉢に押し込むようにして植えつけます。

その際、まだ鉢に隙間がある場合には、水苔を追加します。水苔は単に上からぎゅうぎゅうと詰め込んでも、反発でまた押し戻されうまく入れられないこともあるため、鉢の内壁にそって、外へ外へと押しつけるような感じで入れていくとうまく水苔を追加できるはずです。

ここで一点注意ですが、水苔を詰め、少々きつめに植えつけることは胡蝶蘭にとって大切なことですが、あまりにも詰め過ぎると、根を傷めたり、排水性や通気性が悪くなることもあります。

また、まだまだ水苔が入ると思い、次から次へと詰め込んでいくと、いつの間にか株の下側にたくさんの水苔が入りこみ、結果、株を押し上げてしまうことも有り得ます。そうすると、理想の位置よりも高い所に株がきてしまい、必要以上な浅植えになってしまうこともあるため注意しましょう。

加えて、必要以上の浅植えは良くありませんが、胡蝶蘭はやや浅植えにした方が上手に管理できると言えます。具体的には、鉢の表面の水苔が山型になるようにして植えると良いです。周辺の水苔が鉢の縁よりも低く、中央の株元の水苔は鉢の高さよりもやや高くなるようにして植えつけます。そうすることで水はけの良い環境をつくることができます。

植えつけ後は、株を軽く上から引っぱってみて、ぐらついたり鉢から水苔や株が抜けたりしなければ完成です。

植えつけ後、水やりをしても問題はないこともありますが、一般的にはしばらく水やりをせずに休ませ、様子を見るのが良いとされています。植え替え直後は根が傷ついていることもあるため、一週間くらいは水やりをせずに管理する方が安全です。

植え替え時に使用する水苔は、直前にもどしたばかりで、そもそも湿っているため、植え替え後すぐに水やりをしないことをそれほど心配する必要はありません。しばらくして水苔が乾いたら、初めての水やりを行いましょう。

ただ、水やりについては考え方が異なる場合もあり、植え替え直後から水やりをしたり、メネデール希釈液を与えても良いとする考え方もあります。何が正しくて何が間違い、とあまり神経質になりすぎず、のびのびと管理しても良いのではないでしょうか。

加えて、植え替え直後の施肥は避けます。2週間から1ヶ月ほどは様子を見てから肥料を与えるのが安心です。

<植え替え>
○4月下旬~6月頃が植え替え適期(最低気温15℃以上)
○植え替えは、水苔が乾いているときに行う
○用意するもの
・素焼き鉢(大輪4.5~6号、ミディ2.5~4号※大きすぎない鉢を選ぶ)
・水苔(できれば品質等級の良いもの、等級は1A~4Aで表記、4Aが最高)
・清潔なハサミ
・メネデール(必須ではない)
・鉢底ネット(必要なら)
・鉢底石/発泡スチロールなど(必要なら)
○水苔は熱湯を用い、時間をかけてもどす
○水苔はややきつめに植える
○植え替え直後の施肥は避ける

こんなときどうする?

胡蝶蘭を育てていると、ちょっと気になること、どうしたらいいんだろう? と思うことがあります。いくつかご紹介します。

元気いっぱい!気根が鉢の外に飛び出した!

胡蝶蘭を育てていると、根が鉢の外に飛び出すことがよくあります。植物の根は地中に埋まっているもの、と考えると、胡蝶蘭の根が水苔の上に現れるとちょっと心配になるかもしれません。

ただ、胡蝶蘭は本来、岩や木の幹、地上に着生する植物で、その根も気根と呼ばれる根であるため、根が鉢から飛び出しても何も心配いりません。むしろ、元気に生育している証拠とも言えます。

見た目的には、きれいに水苔の中に納まっている方が良いと思う方もいるかもしれませんが、胡蝶蘭のことを思えば、そのままの姿を愛でてやるのが一番ではないでしょうか。

また、植え替えの際、そうした飛び出た気根は、水苔で巻いて鉢の中に植えることも可能です。無理なく植えられるものは植えて良いでしょう。ただ、気根が元気で上を向いていたり、株の上方から出ていたりして、とても鉢の中には収められそうにないという場合は、無理に植えず、そのまま外に出しておきましょう。無理をすると気根が折れたり傷つく恐れもあります。

変な所で分裂!? 茎の途中からもう1つ株が出現

そこまで高い頻度ではありませんが、まれに、伸びた花茎の途中から葉が出て、そこに新たな株のようなものが形成されることがあります。葉が二階建てになったような姿は、初めて見ると戸惑うかもしれませんが、これも異常ではありません。

しばらくはそのまま育て続けて問題なく、その後、二階部分の葉からも気根が出るようになったら、植え替えの際、二階部分の葉の直下で切断し、別に植えつけることが可能です。

きれいなラッピング! 「外すor外さない」

胡蝶蘭をもらったり買ったりした際、一番迷うことと言えば「ラッピング」ではないでしょうか。売られている胡蝶蘭はその花姿に加えて、華やかなラッピングが美しさを際立たせています。

そんなラッピングですから、どうしたってそのまま飾っていたくなります。しかしながら、胡蝶蘭のことを考えれば、ラッピングはすぐに外してやる方が優しい判断と言えるのです。

ですから、ラッピングが惜しくなければ手元に届いたらすぐにラッピングは外すと良いでしょう。また、必須ではありませんが、必要と感じれば、大きな鉢に植わっている複数の株のポットを、それぞれに分けて管理すのも良い選択です。

ただ、ラッピング込みの姿を楽しみたい、と考える方は、数日程度そのままの姿で鑑賞しても良いのではないでしょうか。できるだけ環境の良い場所に置いてやり、過湿に気をつければ、ラッピングをつけたままだからといってすぐに枯れてしまうというわけでもありません。

それでも、花が終わるまでずっとラッピングを外さないのはさすがに胡蝶蘭にとって辛い環境と言えますので、ご自身の気持ちと胡蝶蘭の気持ちに折り合いをつけて、ラッピングを外してやることが望ましいです。

○鉢から飛び出した気根は元気な証拠
○花茎の途中に葉が出たら、気根が出るのを待って株分けする
○ラッピングはそのきれいさを楽しみつつも、できるだけ早く外すのが無難

胡蝶蘭の魅力

ここまで、胡蝶蘭の具体的な管理についてお伝えしてきましたが、最後に、胡蝶蘭の魅力を少しだけ紹介して終わりたいと思います。

胡蝶蘭の花の美しさやたたずまいの優雅さは言うまでもありませんが、胡蝶蘭の魅力はそれだけに留まりません。例えば、「長持ちすること」が胡蝶蘭の一つの魅力だと言えます。何が長持ちするのかというと、それはすべてです。胡蝶蘭の株自身の寿命も長く、花が咲き続ける時間も長いのです。

胡蝶蘭は長生きする植物としても知られていて、その寿命は50年以上と言われることもあります。環境に馴染み、上手に管理すれば、末永くともに暮らしてゆける植物なのです。お気に入りの一鉢と長くともに過ごせるなんて、すてきだと思いませんか。

また、胡蝶蘭の花にも健気な性質があり、心打たれます。胡蝶蘭はたくさんの花芽をつけ、花茎の株元に近い方から順に開花していきます。このとき、最初に咲く花と、最後に咲く花茎の先端の花との間には、開花までにそれなりの時間差が生じます。

ここに一つ、胡蝶蘭のいじらしい魅力を垣間見ることができます。それは、胡蝶蘭の花は、すべての花芽が開花するまで、最初に咲いた花を落とさないという性質です。最初の花は、最後の花が咲くのを待ち、その開花を見届けるようにしてしおれていきます。

花やその姿は華やかで、葉や気根には少々野性的な印象も受ける胡蝶蘭。土ではなく水苔で生育する点も面白さの一つですが、そんな迫力のある植物にも、そんな繊細な一面があると思うと、いっそう愛おしく感じてしまいます。

○胡蝶蘭は長生き(50年以上生きることも)
○胡蝶蘭の花は健気(最後の花芽が開くまで、最初の花は落ちずに待っている)

胡蝶蘭がある暮らし

素晴らしい花を咲かせ、華やかな雰囲気を演出してくれる植物、胡蝶蘭。その存在感は圧倒的で、何やら魅惑的な美しささえ感じさせます。

そんな胡蝶蘭ですが、花が終わってからも、最低限の管理をすることで、非常に長く育て続け、また花を咲かせることもできます。見た目とは裏腹に、とても育てやすい植物で、几帳面に世話をする人よりも、少しずぼらな人の方が上手に育てられると言われることもあるくらい、丈夫であまり手がかからない植物です。

通常の植物とは異なり、土ではなく水苔で栽培するのも胡蝶蘭の一つの魅力で、そんな少し変わった植物を暮らしに招き入れるのも素敵ではないでしょうか。

水やりの頻度も少なく、条件が整えばたくさんの花を咲かせてくれますし、何より花がない時季にも、肉厚で艶やかな葉や気根で魅せてくれる胡蝶蘭。きっと、多くの方の暮らしにゆとりの時間をもたらしてくれるでしょう。